福知山線脱線事故から12年 命と安全を守る4.22集会

2017/04/24

(2017/04/23 facebookで公表したものを編集)

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事故現場までデモ行進
 

「福知山線列車事故現場整備他工事」の看板
 

たくさんの花で埋まった祭壇
 

無言でこうべを垂れ続けるJR西の社員
 

解体工事の進むマンション
 

現場を通過する電車
 

事故現場を通過する電車から
 

 

 2005年4月25日、JR西日本福知山線を走っていた快速電車の、何分かの遅れを取り戻そうとした若い運転士の無理な運転で電車が脱線、線路脇のマンションに激突して107人の死者、562人の負傷者を出した福知山線脱線事故から12年がたちました。
 ずっと国鉄問題に取り組み、今はJR北海道の路線切り捨てと闘っている、地脇聖孝さんという一回り以上若い友だちから、「退職して京都に帰ったそうですが、毎年尼崎で集会をやってます。今年は私もJR北海道問題で発言します」という案内をもらい、「ノーモアJR尼崎事故! 命と安全を守る4.22集会」に参加しました。
 集会には約100人の労働者が参加、国労本部の坂口委員長が記念講演したほか、遺族代表があいさつをしました。
 事故当時、JR西日本では「日勤教育」という労務管理がずいぶん問題になっていました。些細なミスを取り上げて乗務員を乗務から外し、現場長がいいと思うまで無期限に、「教育」と称して、例えばさらし者にして一日中就業規則を書き写させるというような無茶苦茶なことが行われていた。自殺者も出て裁判にもなった。当時、パワハラという言葉は言葉はまだ一般化していなかったような気がしますが、元祖パワハラともいえる悪辣な労務管理でした。
 無理なダイヤ設定を維持するために、職場における労働組合の力を解体するために、JR西日本は恐怖で乗務員を縛り上げていた。
 少しでも電車を遅らせたら乗務を外され、「日勤教育」になるかもしれない。恐怖した若い運転士は必死で加速した。挙句、カーブを曲がりきれなかった電車は線路を大きく外れ、フェンスを突き破り、マンションの壁に激突し、運転士と、巻き添えになった乗客はぺしゃんこになりました。
 突然家族を失った遺族、突然心身に大きな傷を負った負傷者のショックと怒りは大きく、事故原因の究明と責任者の処罰を要求する闘いは続いていますが、JR西日本の、事故当時の安全担当役員に対する業務上過失致死罪の裁判では無罪が確定しました。神戸地検が不起訴とし、検察審査会の2度の議決を経て強制起訴された歴代3社長に対する裁判でも高裁段階で無罪という判決が出ています。運転士は死亡を理由に不起訴となっているため、12年たった今も、重大事故の法的責任は誰にも科されないまま、事故の風化が進んでいるのです。
 集会では、娘を失った遺族の藤崎光子さんが、107人が死んでも誰も罪に問われないという理不尽な現状をなんとか打ち破るために、組織の犯罪を罰する「組織罰」を実現するために闘っていると報告しました。突然大切な家族の命を奪ったJR西日本。死んだ運転士一人に責任を負わせ、誰一人罪に問われることなく逃げおおせようとしているJR西日本を、どうしても許すことができないという、犠牲者の気持ちがにじむ発言でした。
 集会後、50人ほどが手に白い菊の花を持って事故現場までデモ行進しました。現場は白いシートに覆われ、2つの大型クレーンが設置されて、マンションを解体し慰霊施設とする工事が進行していました。大きなビニールテントの中の献花台にはたくさんの花が供えられていて、私たちが来る前、命日の前の休日を利用してたくさんの遺族が花を供えに来た様子がうかがえました。世間では風化が進んでいても、遺族と傷を負った負傷者には元の日々を取り戻すすべがないことを、たくさんの花が無言で訴えていました。
 黒いスーツにJR西日本と書かれた腕章を巻いた5人ほどの男女がいて、かわるがわる、祭壇の前で無言のままこうべを垂れていました。責任者とおぼしき人をのぞき、12年前には入社していなかったのではないかと思われる若い社員たちでした。非現業部門で働く幹部候補生だろう若い人たちに、業務としてこうべを垂れさせてつじつまを合わせ、逃げおおせようとしている本当の責任者がいる。私たちの非力を思わざるを得ませんでした。
 福知山線脱線事故については、様々な観点から原因が議論されていますが、公共交通の経営者にとって絶対の責務である乗客と労働者の安全がおろそかにされたとき、最後の砦となるべき労働組合が分割・民営化の過程で大打撃を受けて機能していなかったことが、大きな原因であることは間違いありません。
 「安全なくして労働なし」という当たり前の立場を貫くことのできる、資本から独立した労働組合を職場を基礎に再建すること。先は見えません。しかし、それが求められているのだと私は思います。

2005/06/19 「尼崎事故と分割・民営化」 ←事故直後に書いたものです

遺族が中心となって活動する「組織罰を実現する会」
http://soshikibatsu.jp/