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ILOの中間勧告(抄)と国労のコメント

【 ILO報告書 】

ILO(国際労働機関) 
(1999/11/18) 
翻訳:ITF東京事務所 

●委員会の結論

265.

 委員会は、本案件では、2点の申立てがあることに留意する。第1点は、1987年に国鉄を民営化する決定に引き続き、承継法人であるJR各社が多くの申立人(国労及び全動労)組合員をその労働組合所属だけの理由で採用しなかったことに関係している。さらに、JR各社の採用拒否に従い、彼らは国鉄清算事業団に配置転換され、事業団はその後、1990年にその多数を解雇した。第2点目の申立ては、多くの地労委と中労委が不当労働行為の存在を認定した上で各社に差別的行為を是正する措置をとるよう命じた救済命令に対して、会社側が裁判所に提訴することによりこのような措置をとることを回避したという申立人の主張に関係している。申立人は、反組合の意図及び目的があるにも関わらず、現行の日本の制度では、団結権が効果的に保護されていないと結論している。

266.

 委員会は、採用時に差別(とそれに引き続く失職)があったという申立てが国鉄の民営化の状況の中で生じていることに留意する。この点に関し、委員会は、経済的な合理化計画やリストラ手続に関する申立てについては、余剰人員を含んでいるかどうか又は事業体もしくはサービスが公的部門から民営部門に移管されるかどうかに関わらず、労働組合に対する差別もしくは介入を生じている場合に限り、委員会は審査を行うことができると考える[1996年発行「結社の自由委員会決定と原則要約」第4版935項参照]。本件では、申立人は、1987年4月にJRへの採用を拒否された7,600人の労働者が国労及び全動労の組合員であったと申立てている。委員会は、7,600人がJRの採用を拒否されて清算事業団に異動し、1990年4月に1,047名が解雇されたという申立てを、政府が否定していないことを留意する。多くの国労及び全動労組合員の採用をJR各社が拒否した理由に関して十分な認識に基づいた結論が出せるよう、委員会は、日本政府に対し、この点について追加情報を提供するよう要請する。

267.

 委員会は、1,047名の国労及び全動労組合員が、採用拒否の結果によってその後失業していることでいまだに苦しんでいること及び申立人によれば司法手続きはあと数年はかかるので失業状態が今後しばらく続くことを遺憾に思いつつ留意する。委員会は、政府がこれまでJRと関係労働者との間の紛争解決のために努力してきていること及び解雇された国労及び全動労組合員問題を解決する努力を続けるという政府見解に留意する。委員会は、日本政府に対し、当該労働者に公正な補償を保障する、当事者に満足のいく解決に早急に到達するよう、JRと申立組合間の交渉を積極的に奨励するよう要請する。委員会は、日本政府がこの点に関する進展について引き続き報告するよう要請する。

268.

 労働委員会が発出する不当労働行為に対する救済命令が裁判所によって取り消されること及び使用者が命令の実施を遅らせようと繰返し裁判に持ち込むことにより、日本の法律制度は団結権を保護していないとの申立てに関しては、委員会は、この申立てが根拠がないこと及び日本国憲法ではすべての人が裁判を受ける権利を有するという政府の主張に留意する。委員会は、この点について2点、意見を述べる。

269.

 第1に、委員会は、裁判所が解雇及び解雇の不当性に関する案件を判断できることが特に重要だと考える[第313回委員会報告1952号事件(ベネズエラ)300項参照]。しかしながら、委員会は、自由意思で批准した条約であり、司法機関を含むすべての国家機関が尊重しなくてはならない結社の自由に関するILO条約の適用を保障することは日本政府の責任だと考える。本件においては、委員会は、国労組合員の解雇問題が東京高裁に係属中であり、全動労組合員の解雇問題は東京地裁に係属中であることに留意する。委員会は、言い渡される判決がILO第98号条約に沿ったものとなることを信じている。委員会は、政府に対し、裁判の結果を引き続き情報提供するよう要請する。

270.

 第2に、委員会は、必要な救済が真に効果的となるよう、ILO第98号条約に反する反組合差別の案件は迅速に審査される必要があることを強調する。反組合的差別案件の審理の大幅な遅延、特に企業によって解雇された組合指導者(又は組合員)の復職に関する手続きの長期の遅れは、社会正義の否定であり、その結果、関係者の労働組合権が否定されることとなる[前掲[要約]749頁参照]。本件では、委員会は、すでに18の地方労働委員会同様中央労働委員会が発出した救済命令に対して繰返し提訴が行われた結果、救済命令が停止されているために、国労及び全動労組合員に関しての手続きが大幅に遅れていることについて、懸念を持って留意する。この点に関する委員会の見解は、最高裁まで持ち込まれた場合、審理が終了するまでには更に10年を要するであろうという申立人の主張によって裏づけられた。しかしながら委員会は、争点及び証拠の整理を迅速化する手続き及びその他の集中証拠調べを容易にすることを規定し、審理期間の短縮が期待される昨年施行された新民事訴訟法についての政府見解に留意する。委員会は、日本政府に対して、新民事訴訟法の関係条文を提供するよ う要請する。委員会は、新たに制定された民事訴訟法によって確立された手続きによって、ILO第98号条約に反する反組合差別に関する諸案件が今後迅速に審理されることを強く期待する。委員会は、日本政府がこの点に関する進捗状況について引き続き報告するよう要請する。

●委員会の勧告

271.

 上記の中間的な結論に照らして委員会は、次の勧告を承認するよう理事会に要請する。

(a) 多くの国労及び全動労組合員の採用をJR各社が拒否した理由に関して十分な認識に基づいた結論が出せるよう、委員会は、日本政府に対し、この点について追加情報を提供するよう要請する。

(b) 委員会は、日本政府に対し、当該労働者に公正な補償を保障する、当事者に満足のいく解決に早急に到達するよう、JRと申立組合間の交渉を積極的に奨励するよう要請する。委員会は、日本政府がこの点に関する進展について引き続き報告するよう要請する。

(c) 自由意思で批准した条約であり、司法機関を含むすべての国家機関が尊重しなくてはならない結社の自由に関するILO諸条約の適用を保障することは日本政府の責任であることを想起し、委員会は、国労及び全動労組合員の解雇に関する裁判所の判決がILO第98号条約に沿ったものとなることを信じている。委員会は、日本政府に対し、裁判の結果を引き続き情報提供するよう要請する。

(d) 委員会は、新民事訴訟法の関係条文を提供するよう要請するとともに、真に効果的な救済が得られるように保障するため、新たに制定された民事訴訟法によって確立された手続によって、ILO第98号条約に反する反組合差別に関する諸案件が今後迅速に審理されることを強く期待する。委員会は、日本政府がこの点に関する進捗状況について引き続き報告するよう要請する。


【 国労のコメント 】

1999/11/18 

 国際労働機構(ILO)は、本日、国労及び全動労の「苦情の申し立て」(1991号事件)に対し、理事会本会議で結社の自由委員会報告を採択した。勧告は、別紙の通りである。  (a)においてILOは、国労及び全動労の雇用をJRが拒否したことについて、ILO条約に違反しているという認識にたったと受けとめられる。そのための追加情報を提供するよう日本政府に求めている。  (b)においてILOは、JRと申し立て組合間の積極的な交渉を奨励している。加えて、関係者が満足のいく解決に到達するよう、この交渉促進のための政府の積極的努力を求めている。
 これらは、国労がかねてから主張し、政府・JRに求めていたことと同様であり高く評価できる。
 また、本日明らかになったILOへの政府回答によると、政府自身が解決への努力をしていることを明言しており、日本政府による国際公約といえる。
 (c)においてILOは、昨年5月28日東京地裁判決が、裁判所を含めて、遵守すべきILO条約に反するものであることを間接的に指摘したものであり、今後の東京高裁における判決は、この指摘を重く受け止めることが求められる。
 (d)において、ILO条約に違反する反組合差別事件が新民法の下で迅速に審理されることを期待するILOの態度を表明している。結論部分においては、事件発生以降10年異常経過している現状について遺憾の意を表明している。
 反組合差別に対する事件は、迅速に救済されるものでなければならないというILOの基本的立場を新民事訴訟法との関係においても指摘したものである。
 国労は、政府の責任により関係者間の話し合いによる早期解決を図る決意であることを改めて明らかにする。日本政府は、ILOの勧告を真摯に受け止め、関係者の話し合いを積極的に奨励し、次回ILO理事会(2000年3月16日〜31日)までに全面解決を図るべきである。


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