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おおたの中小企業、昨年度の状況・報告
雨模様は変わらず。「公」側のご意見・統計発表には疑いの目を

 おおたの中小の工場・小売業等は、昨年2015年度・景気は良かったのか。あるいはまあまあだったのか。政府・大手新聞等が取り上げるのは大企業の様子ばかり、しかし、国民・区民の大半9割以上は現実には中小で働いており、その状況を知らせるのが本来は政治・マスコミのお仕事のはず、大企業の業績や賃金のみを取り上げ「景気は上向き」と騒ぎ立てるがーーー我々区民の生活実感からはどうもそうとは思えない。そこで、本誌はおおたの「真の景気の状況」をご報告すべく、調査してみた。そして今回は、従来とは変わった角度からの分析も加えて、まとめてみよう。

弱者切捨ては当たり前の思想???

昨年秋に「菅官房長官」は、企業の景気の動向について「下請けや中小は、依然取り残されていることは認識している」という発言を、いとも平気でさらりとこなしていた。この発言はここ2年ほど毎度のことであるが、そこにはなんの問題意識も感じられない。先にも述べたように中小が苦しい、ということは9割の国民が苦しい、ということではないか。また、インタビューに取り巻く大手記者たちも、これについてなんの突っ込みもない。いや、あったのかもしれないが放送はされなかったし、記事としても取り上げられることもなかった。これは最悪である。ほんの一握りの大企業が儲かっていても、また、報酬が上がっても国民の大半の懐と関係ないのなら、発表する意味も報道する意味もない。

大田区の景況は

 そこで、いつものように、中小企業の景気動向を、区の産業振興課の調査(調査機関 東京商工リサーチ)から、調べ、引用させていただくことにした。
 その結果は2015年度は、区の製造業・小売業ともに、年間を通して「業況は悪化傾向、あるいは厳しさが続く」という「雨降りマーク」(本誌前回解説の景気表示マークのこと)が続いている。つまりは、同マークが「晴れあるいは曇り」になることは決してなかった。区内780社うち回答444社の結果である。またその各社の示す問題点も「売り上げの停滞・減少」だったから、どの会社・小売店等も昨年度は収益の向上とは無縁だったわけである。先にも指摘したように、好景気なのは政治に援護射撃を受けた一流企業といわれる企業群のみ。この前提を改めて認識していただきつつ、次の調査結果を見ていただこう。

区内の中小・雇用は、賃金動向は

 私たち区民・国民と直接関係のある雇用と賃金は、どうだったのか。新聞等が報道したように賃金はまあまあに上昇して雇用もほんとうに人手不足なのか。(こちらも区の調査・商工リサーチより)

昨年度の賃金改定について

正規社員の改定 

引き上げた 50・9パーセント
据え置いた  44パーセント

非正規社員の改定

引き上げた 20・7パーセント
据え置いた 42・2パーセント
もともと非正規なるものがいない 34・4パーセント

 これではいわゆる庶民の懐は寒いままだ。景気が良いのはほんの一握りの大企業だけであるのが良くわかる。更にどういう形で引き上げたか、引き上げた理由は、についてデータは語る。

引き上げた、内容は

定期昇給にて 79パーセント
賞与で増額 39・5パーセント

引き上げた、理由は

従業員確保のため 36・7パーセント
業績を還元のため  56・1パーセント

 ここから見えるのは、売り上げも伸び、利益もまあまあ増加したのは約半数の企業・商店である事が分かる。従業員をとどめておくため、やむなくという苦しさゆえの企業も約3分の一に上る。一方、引き上げられなかったグループは

据え置いた・引き下げた理由

景気見通しが不透明 53・8パーセント
業績低迷 50・5パーセント

 上記の結果を皆さんは「やっぱりかーー」と、思われたことであろう。
 そして、雇用についての実態・調査も興味深い

新卒社員の採用ついて

採用した 16・8パーセント
採用せず 83・2パーセント

中途採用

採用した 29・5パーセント
採用せず 70・5パーセント

今後1〜2年での採用の見通しは

正規社員 

増やしたい 34・5パーセント
変えない(増やさない) 62・2パーセント

非正規社員

増やしたい 13・3パーセント
変えない(増やさない) 49パーセント

雇用増やせず、賃上げもできて辛うじて

 雇用については、大半が「増やさない」であるし、賃金についても「増額した」が正社員レベルでなんとか半数、非正規となると「据え置き」が多数であった。いや―――この数字からは増額についても「なんとか増額せざるを得なかった」様子が見て取れる。
 今回、本誌の直接取材した工場および小売業の各経営者も口をそろえて言う。「景気のいいのは大量に政治献金する大企業だけだね、彼らはおまけに減税とか国民の誰もが払う復興特別税(震災支援)の前倒し免除、までおみやげにつけてもらって、これじゃ大企業は至れり尽くせり。どうして大企業だけが国の災害の復興に金を払わないでいいのか。これだけ見てもあきれ返るね。まあ、大田の商店・会社は景気などとはおよそ関係ない、街中でも景気のいい人など見たことがないよ。大田ジャーナルで本当のことを伝えてほしいね」。

最近はとみに大本営発表?

 国民の貧困率は6人に1人。更に、最近は人手不足という話がしばしば出るが、とんでもない。「ひどく安い賃金で雇用しようとするから人が集まらないんじゃないの ? 」という視点が政府やマスコミにはない。「公」側のご意見・統計発表・報道には「ちよっと待てよーーー本当にそうなの?」の精神で考えてみることが最近特に必要であろう。

(区内在住ジャーナリスト・N)

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