ホーム >  2014/12 > 子どもと教育・平和

「子どもと教育・平和を考えるつどい」開かれる
問われているのは中高年世代だ!

 10月24日「教育子育て九条の会」「公正な教科書採択を求める大田区民の会」などが共催し、区立消費者生活センター大集会室を会場に標記の集会が開催され、会場を一杯にする参加者がつめかけた。参加した読者の方から寄せられた講演内容、会場の声などの報告を紹介します。(本誌編集部)

 「今、60歳以上の人たちが問われている。自分は戦争に征かなかった。こどもや孫たちを征かせるの?」(小森陽一さん・慰労会で)

自民党憲法案を学べ(堀尾輝久さん)

@権力を縛る憲法から国民を支配する憲法へ日本国憲法前文「日本国民は・・・この憲法を確定する」。
⇒自民党案前文「日本国は・・・この憲法を制定する」。
・「国民が」「確定」した憲法を、「国が」、改正ではなく新しく「制定する」というのだから、立憲主義(「政府よりも前に憲法があり、憲法よりも前に人間がいる」(トーマス・ペイン)を基本におくはずの近代憲法とはまったく異質な憲法案だ。
・国民の権利を守るために権力を縛る憲法を、権力が国民を支配する道具へと、近代憲法の一番の基本原則を変えようというのだ。
A普遍的人権が嫌い?
日本国憲法97条「この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であって、これらの権利は、過去幾多の試練に堪え、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである」。
⇒自民党案 全文削除
・「幾多の試練」(様々な抑圧や圧政、民族差別・女性差別など)に対し、「自由獲得の努力」(それらの抑圧・差別との闘い)を続け、基本的人権を獲得してきた。これらを全文削除した自民党案は、「この努力を続けよう!!」という、歴史的で普遍的な人権思想が嫌いなようだ。
・前文で、「天皇を戴く」由緒ある歴史的伝統を強調する。これが自民党案の狙いだ。

B「個人の尊重」と「人として尊重」は、まったくの別物
日本国憲法13条「すべて国民は個人として尊重される。・・・国民の権利について
は、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」
⇒自民党案「・・・人として尊重される。・・・公益及び公の秩序に反しない限り・・・」
・国や憲法が生まれる以前から、すべての人間が生まれながらに持っている自然権としての個人の尊重ではなく、「この憲法を制定する」国が、「公益及び公の秩序に反」するか否かを判断し、その限りにおいて「人として尊重する」というのだ。
C変えるのは9条や集団的自衛権だけではない!
近代憲法の歴史上の到達点である日本国憲法の国民主権・基本的人権の尊重・平和主義という三原則を根本からくつがえし、日本の国の形そのものをまったく変えてしまおう。教育で国民の意識を根本から変え、「自主憲法」を変えよう。これが、「教育再生」政策(教員統制・教育委員会制度の変更・学習指導要領や検定基準の変更・道徳の教科化・・・)のねらいだ。自民党憲法案で、こどもたちはどうなるか?学ぶ必要がある。(同氏論文が『人間と教育』No.82 2014年6月号に掲載)

もうごめん!戦争への道をひらく教科書は(公正な教科書採択を求める大田区民の会)

 「日本の戦争は、自衛のための正しい戦争だった」。
これは、横浜の中学校出身の生徒の高校の社会科授業での発言だ。横浜市立中学校では、以前から「つくる会」系社会科教科書を使っている。大田区でも2012年から「つくる会」系の育鵬社の社会科教科書を使っている。日本国憲法の三原則を軽視し、平和主義への疑いを強調する教科書だ。「つくる会」系教科書で学べば、こう考える人々は確実に増える。

「つくる会」教科書を推す自民党の動き

 首相は、「教育基本法(第一次安倍政権で成立)の趣旨をよく踏まえているのは育鵬社の教科書」と、繰り返し公言している。自民党本部は、育鵬社の採択率を前回の4%から来年夏には10%にすることを目ざし、「党をあげての取り組み」を指示、地方議会の決議文や質問の手本を送るなど、全面的にバックアップしている。今年、「教育再生首長会議」を設立、現在90名以上が加盟(品川区長も加盟)している。
 法律が変わり、来年4月からは区長が、区の教育大綱を策定する権限と、今までの教育委員長と教育長の権限を併せて持つ新教育長を任命する権限を持つことになる。首長が教育内容に今まで以上に大きな影響を持つことになる。

今からの運動が重要

来年ではなく今から、広く・深く・速い共同行動をさまざまな手段で進めたい。

若者と希望を語り合おう(白神優理子さん)

「憲法はめんどうくさい」から弁護士へ

 米軍基地の爆音の下の町、海老名で育つ。高校時代に、沖縄・広島・長崎の体験者から生の思いを聴いて、弁護士を目ざす。司法修習の現場も沖縄を選び、弁護士になって1年目。現在、原爆認定集団訴訟・横田基地爆音訴訟・労働事件などで働く若い弁護士。

集団的自衛権行使で、日本は何を失くすのか?

 9条に反する集団的自衛権の行使を、しかも立憲主義が許さないはずの閣議での解釈変更で決めた。アメリカの戦争についていくことになる。戦争をするのに、権利は邪魔者だ。政府に都合の悪い情報は隠して思想統制をする。知る権利・表現の自由・学問の自由は邪魔だ。社会保障を削り軍事費を増やすのに、生存権は邪魔だ。戦争・自由権や生存権の抑圧や制限に反対する人を抑え込むのに、プライバシーや公開裁判を受ける権利は邪魔だ。思想統制には、個人の尊重は邪魔だ。人権と民主主義・9条の下で培ってきた日本への国際的信頼、そして、命、特に若者の命が失われる。

希望を語り合う「しゃべり場」を!

 日本国民は、96条改憲を許さなかった。集団的自衛権の行使容認は、反対が賛成を大きく上回る。若者や父母の反対がとくに目立つ。多くの専門家たちも反対声明を出している。内閣不支持率が大きく増えた。「強い日本」に心をひかれがちな若者たちにも、日本の希望を語ろう!
@戦争の実態をしっかり伝えよう。
A「強い日本」を念じ、自らを委ねようとするのは、自分にも日本にも自信が持てないからだ。人権や平和を獲得してきた進歩の歴史を伝えよう。
A若者に希望を語り合う「しゃべり場」を。権利獲得・回復のために闘う人々や体験者と語り合うのだ。

会場の声

 「お尻に火が点いた!」小学校3年生の子を持つお母さんは語る。「私の子も中学で使うことになる。みんなに伝える場を持ちたい。」来年採択された教科書は、2019年に中学校に入る子どもたちまでは使うことになる。切実な声だ。
 弁護士は語る。「近代民主主義・日本国憲法の原則である立憲主義・法治主義・国民主権が学べない。憲法改正の必要を強調する。各国憲法の徴兵制の条項を紹介する。これが、この教科書が目ざす国の形だ」。
 現場教師は悩む。「限られた準備時間で、教科書を乗り越える授業をするのは、なかなか厳しいのが現実だ」。
 自宅前に爆弾を落とされたという戦争体験者は語る。「若い人、特に子ども連れのお母さんが、九条署名に応じてくれる」。

「教師に自由を認めないということは、馬鹿になれということだ。」

 講演をした堀尾さんはラッセルの言葉を付け加えた。区内のある中学では、進路学習に自衛隊を呼ぶ計画が進められていた。権力者が、不安を煽って敵を仕立てあげ、自らの考えで教育を支配し国民を統制する。帝国憲法と教育勅語の時代の日本、現代の独裁国家がそうだ。その惨憺たる光景と国を滅ぼした結果を、私たちは知っている。

(公正な教科書採択を求める大田区民の会・会員)

ページの先頭へ↑