10月4日、5日の両日、「希望―未来を拓こう 子どもたちとともに」をテーマに、第42回大田区生活展が、区立消費者生活センター全体を会場に開催された。区内の消費者団体が力を合わせて、消費や生活の諸問題を広く訴える年1回の貴重な催し。ところが、4日は晴天に恵まれたものの、5日はあいにくなことに今年最強の台風19号が接近、時を追って強さを増す雨脚が主催者をハラハラさせた。
強雨の中 多くの参加者
しかし会場はそんな心配を吹き飛ばすように、両日共多くの参加者でごった返した。正確な数を把握しているわけではないが、筆者の実感では、子どもたちの元気な姿も例年以上に目立ったように思われた。実行委員長の小笠原晴美さんは開会セレモニーであいさつに立ち「消費者が力をつけ振り回されない消費のあり方を自ら作り出そうとのメッセージを込めて今年を準備した。そのために子どもたちの参加を特に重視し、小学校への働きかけにも力を注いだ」との趣旨を述べたが、その意欲的な働きかけは確かに届いたのではないだろうか。
筆者は展示ブースを訪れる参加者への応対におわれ、そこにほとんど釘付け状態となるほど。数多く用意された他の様々な企画・訴えを十分見て回れなかったことがむしろ残念だった。
消費を見つめ直す
ただざっと見た限りだが、消費のあり方を足もとから見直し、与えられるものではない消費を様々な角度から呼びかける側面がより強く表現されるようになっていると感じた。その点でも印象に残ったものは、都立つばさ総合高校の展示。この高校は例年、生徒が取り組んだ環境活動の成果を展示しているのだが、今年のテーマは、同校生徒が年間に消費する清涼飲料水の実態調査。そのための年間支出総額が1000万円の単位で集計されていたのにはあらためて驚かされた。着眼点共々、むやみやたらと清涼飲料水に手を伸ばすことはやめよう、との言外からにじむメッセージも鮮やかだ。
羽田空港増便抑制の訴え
この中で大田ネットワークは、「羽田空港を監視する会」担当の展示を行った。テーマは「羽田空港と区民の生活・新飛行コースで何が起こるの?」。今年6月「首都圏空港機能強化技術検討小委員会」が公表し、マスメディアが大々的に取り上げた羽田空港飛行コース新提案に潜む深刻な問題を、主に航空機騒音と危険に絞って取り上げ、この提案を実施させないよう声をあげようと呼びかけた。この新提案は「航空需要の増大に応える」を大義名分の一つとしているが、展示の結論部分には、抑制が切実に求められているエネルギー需要を例に取りながら、応えるべき需要とは何かの選択が必要な時代、羽田空港はむしろ需要抑制こそが必要になっている、との主張も加えた。事前に自覚していたわけではなかったが、これもまた、与えられた消費からの脱皮という今回の全体に流れる基調に、図らずも添うことになったように思う。
やはり新コースには多くの懸念が
来訪者の反応では、今回の新コース提案に懸念を語る人がやはり目立った。羽田空港に醒めた感覚も感じられ、国際化や空港による活性化にのめり込む大田区行政と一般区民との間には、一定のギャップが生まれているのかもしれない。有志提供の、1938年に起きた大森への墜落事故を大々的に報じている当時の新聞コピー(今から見るとおもちゃのような小型飛行機だが、3桁の死傷者が報じられている)をブースの机に並べたが、これに関心を示す来訪者もかなりいた。実際同一紙面上には、戦地(日本軍が侵略した中国)慰問で文学者は何を語るべきかなどと、菊池寛や林芙美子が語っている記事もあり、事故記事だけではない興味深い記事もあった。
ただ展示を準備した者としては反省点が多かった。まず展示標題や説明の文字が小さすぎ、目立たず読みにくかったのは大失敗だった。また会場が混み合う中では展示をじっくり読んでもらうことは実際難しく、内容をちらしにして手渡すことが必須と、あらためて実感した。やはり手抜きは悔いを残す。
(羽田空港を監視する会・大道寺)