8月28日、東京地裁(民事19部)は、2010年1月の倒産で企業再建中の日本航空で、同年11月、更生計画の事業縮小、人員削減策を労働組合と協議中に、管財人である「企業再生支援機構」(裁判所が認定した実質の経営者)が客乗組合と乗員組合の「スト権投票行為」に公然と介入した事件に対し「明白な不当労働行為」と認定した。
2010年11月15日、企業再生支援機構は、それまで政府と会社側が言ってきた「整理解雇は行わない」との前言を翻し、突然「整理解雇を実施する」と表明した。当時両組合は再建計画での「整理解雇に反対する方針」を掲げ、全組合員のスト権確立投票を進めていたのだ。機構側は「もし争議権を確立した場合はそれが撤回されるまで3,500億円の出資をしない」と露骨な介入発言を行い、さらに職制を通して社内の一般組合員にも通知し、組合運動を妨害したのである。
客乗組合はスト権を確立・乗員組合は投票を中止して両組合で救済申し立て
管財人と日航労務によるこの露骨で明白な不当介入を前に、客乗組合(CCU)はスト権投票を敢行してスト権を確立、しかし乗員組合は投票を一旦中止した。12月8日両組合は本件を不当労働行為として東京都労働委員会に救済を申し立てた。
都労委は誰がみても明白なこの事件に対し、2011年8月3日、会社・管財人の不当労働行為と認定し暴挙を断罪した。これに対して会社側は、中央労働委員会への再審申し立てを行わず、9月1日「信頼」する東京地裁に、命令取り消しを求めて直接提訴したのである。
法律のプロが行った不法行為は重大
当時、日航の再建役を担って社内の隅々までにらみを利かせていた管財人である企業再建支援機構は、政府の所管する公的機関として設立され、血税を使って企業の再建を支援する機関であり、日航担当らは弁護士資格を持つ法律のベテラン陣であった。
この事件の1.5ヶ月後の12月31日、165名(パイロット81名、客室乗務員84名)の整理解雇を強行した彼らの脳裏には、「整理解雇」の大罪を犯すためには「不当労働行為」の2件や3件は朝飯前、「自分たちこそが法律」と傲慢にも思っていたのだろう。スト権投票への支配介入以外にも、当時日航内では退職強要や飛行業務の取り上げ、監視やパワハラなど人権、労働権を無視した強権支配が蔓延し、管財人と職制天下の無法地帯と化していた。
整理解雇合法の高裁判決は見直されるべき
本年6月に相次いで出された整理解雇を有効とする高裁不当判決は直ちに見直されるべきものである。なぜなら両判決は今回の明白な組合介入=不当労働行為を無視し、または避けて作文されたもので、事実認定を恣意的に誤ったものであるからである。
(梅津・大田区在住)