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【羽田空港北側離着陸問題】
国交省運用増新方針は少しも新しくない
住民より航空産業の価値観も不変

 国交省がまたも策す羽田空港のさらなる運用拡大方針を前号で取り上げた。空港北側からの進入コース新設が目玉とされ、「有識者会議」なるものの承認を受けたなどと、何やら「斬新さ」に「権威」までにおわせているが、この策、実は何の新しさもない。

●国交省の狙い以前から

 例えば本誌2000年3月号は、「住民の生活と安全は二の次に〜フリーハンド運用をもくろむ運輸省〜」という標題で、同年12月号でも「再び始まった区民・国民不在」という標題で特集を組み、基本的には今回と変わらない方針を当時の運輸省(現在の国交省)がすでに温めていたこと、それが住民をまったくないがしろにしたものであることを伝えている。それを確認できる資料として、当時掲載した資料をあらためて紹介したい。
 資料1は、沖合移転事業完了後に実施したいとして、当時の運輸省が大田区に申し入れた運用方針(3月号掲載)。この文書では各滑走路には「新」という形容詞がついているが、それは多くの人に移転前の空港のイメージが残っていたためで、「新」のつかない現在のA、B、C各滑走路を指している。見る通りここにははっきりと、空港北側を飛行コースとして使いたいと明記されている。日付が示すように、運輸省はすでに2000年以前から、北側を飛行コースとして使う意志を持っていたことが歴然としている。

●低騒音というが

 資料2は、12月号掲載のものだが、先の運輸省申し入れに添付されたもの。北側からの進入コース、その際の高度、航空機騒音推定が付記されている。高度はフィート表示になっているが、私たちに馴染みのメートルに換算するためには、0.303倍すればよい。例えば多数の住民が住む八潮団地のある勝島近辺の高度は、約242メートルとなる。まさにとんでもない低さであり、騒音はむろんのこと、恐怖感や圧迫感を含め住民を何だと思っているのか、と言うしかない。
 資料2については、ここでの騒音推定がMD―90―30という機種を対象に行われていることに注意したい。これはすでに退役した100人未満しか乗せない小型機であり、今回考えられている国際線機種よりも騒音が相当に小さくなると考えられるからだ。
今回の発表でも、A滑走路北側離陸左旋回飛行でもそうだが国交省は、住民に対する騒音説明ではいつも、低騒音機使用、技術進歩による騒音低下を強調する。しかし実際の経験、例えばA滑走路北側離陸左旋回飛行で私たちは、それほど顕著な騒音低下など実感していない。しかも騒音には機種よりもむしろ機体重量の影響が大きい。その点で、機体重量の大きな国際線が対象だとされた今回の北側からの進入方針は最初から論外であり、それへの「有識者」によるゴーサインは、不見識もはなはだしいと言わざるを得ない。
 現在、区当局も区議会も今回の国交省方針には冷淡な空気が強い。しかしそれは、見てきたような国交省の住民ないがしろ姿勢、手を変え品を変えその姿勢を住民にのませようとする狡猾さを、粘り強く押し返してきた住民の抵抗があってこその話しだ。オリンピックを格好の口実に、またも住民を二の次にしようとするやり方を許してはこれまでの苦労が台無しになる。今回の問題は、羽田空港はすでに十分運過密であり、これ以上の運用拡張は危険しか生まないことをあらためて知らせている。羽田空港の運用拡張をこれ以上は認めない、との声をあらためて強くすることが求められている。

(羽田空港を監視する会・大道寺)

 

※ 電子版では図が欠落しています。申し訳ありません。(電子版担当)

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