ホーム > バックナンバー > 2014/07 > JAL整理解雇事件
6月3日(火)JAL(日本航空)客室乗務員(控訴人・71名)が東京地裁判決(2012年3月30日・会社解雇は正当)を不服として控訴した二審裁判について、東京高裁(第5民事部・大竹たかし裁判長ほか2名)は一審判決を追認し「JALの整理解雇は有効」との極めて政治色と保身に満ちた判決を行った。
続いて同月5日(木)同高裁(第24民事部・三輪和男裁判長ほか2名)はパイロット(控訴人70名)の二審についても、ほぼ同主旨の「控訴棄却」判決を行った。(一審は2012年3月29日判決)
六裁判官で合議???
両判決はそれぞれ異なった(独立した)高裁民事部で、各3名の裁判官により約2年にわたり異なった証人尋問を含む審理がなされてきた。
昨年12月の結審にあたって、両裁判部は本年5月15日客乗裁判、同6月5日パイロット裁判への判決日を指定した。ところが高裁は、客乗裁判の判決予定日直前になって期日を延期し、地裁の時と同様、パイロットの判決日直前に合わせた。
両判決はいずれも「整理解雇は有効」
理由は会社更正法に基づきJAL「再建」のため裁判所(東京地裁)が「管財人」を指名し、その下で「再建計画を策定して」裁判所がこれを認可した。「再建計画」に人員削減の項目(総枠の人員削減案のみで、具体的削減計画なし)があったことを「金科玉条」として、管財人が(即ち認可した裁判所も)”間違ったことをするはずが無い”というもので、原告の多くの決定的な証拠と主張を無視した。盗人猛々しいとはこのことである。企業再生支援機構(再建を主体的にリードした)と裁判所がグルになって、2010年の大晦日、JALのベテラン客乗員・パイロット計165名の指名整理解雇を強行したのである。
一、二審を通してこの解雇事件では「裁判所」は始めから利害関係者であり、共犯者であったことを白状した。
司法も安倍政権に迎合
本判決が極めて政治色が強いものであることは、現下の安倍政権が進める「企業が世界一活動しやすい国」づくりへの策謀の一環で、労働行政の大幅な規制緩和、経済特区下での経営者の解雇自由への社会改造政策の先取りであることが見て取れる。
「整理解雇」に名を借りた今般のJAL労働者処分が、20世紀末に策動された1047名の国鉄労働者パージに継ぐ、国家的不当労働行為であることは今や疑う余地がない。
JAL解雇事件の一審判決が迫った2012年2月、資本は「再建中のJAL」になんと最高裁判事を定年退官して間もない「甲斐中辰夫」なる検察官あがりの司法官僚OBを「社外取締役」として送り込んだ。司法の頂点たる最高裁元判事をにらみ役として配したのである。続いて同年7月 、厚労省で局長を務めた女性キャリアOBで当時資生堂副社長の「岩田喜美枝」氏を、これまた社外取締役に招いたのだ。倒産再建中の民間会社にとって、甲斐中氏や岩田氏が緊急に手腕を発揮できるほど航空会社の経営は甘くない。JALの現職社員に彼ら「天下り官僚」の”働きぶり”を聞いても、全く反応が無い。
「更生計画に書いてある」が唯一無二の根拠
控訴審裁判で、パイロット・客乗両原告は解雇された2010年12月当時、希望退職と自己退職によって、「更生計画」で目標とした人員削減数は既に超過達成していた旨の主張を「克明な社内・外資料」により立証した。つまり「整理解雇の必要性」は当時存在しなかたのである。それ故経営トップの稲盛会長が法廷でも「経営的には解雇の必要はなかった」の証言(客乗裁判)と相俟って名実ともに裏付けられたのだ。事実当時の経営状況は計画を3倍も上まわる利益を計上し、3年の再建計画を1年前倒しするほどの状況であった。
一審裁判官はこの稲盛証言について「心情を語ったもの」「稲盛会長は解雇当否の判断権限を持っていなかった」と裁判のあり方を根底から覆して、資本の擁護に尽くした。
また人選基準も「年齢」と「会社貢献度」で恣意性が入り込む余地は無い。組合幹部・経験者・活動家の排除の意図は覗えないと会社主張の駄文をそのまま引き写した。
整理解雇の提案に対して、客乗組合と乗員組合がこれに反対すべく、「スト権投票」を提案した際「企業再生支援機構」(裁判所が認める実質の経営者)からの3,500億円の融資をしないとの「明白な組合介入・不当労働行為」には無視を通した。始めに結論ありきで、裁判の態を為していない。これでは「軍法会議!」と原告の一人は怒りを露わに抗議している。
客乗・パイロットの被解雇者有志135名は6月17日、最高裁に上告し最後の司法決戦を挑む。
(梅津純一)