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「最新版・大田区の中小工場と商店の今」
アベノミックス効果は? (2)

あいた口がふさがらない、新聞各社の報道

 このシリーズの原稿を書き始めた3月に、なんと新聞各社は、「アベノミックスはすごい効果を出している」という、首相と政府に対する称賛記事を一斉に載せた。その中身は、「いよいよ中小企業でも景気は上向き、利益も上昇」というものだ。
 それではーー筆者の手にするデーターはどうなるのか、と慌てたが、案の定、政府の使うリサーチ機関と、当方が基とするリサーチ会社(東京商工リサーチ・都も依頼するきちんとした会社)とは別ものであった。
 ということは、昨今の新聞記事は他に信頼できるデーターがあるのも確認せず政府発表を鵜呑みにしたひどいものであった。このことを皆さんにはご認識いただければ幸いである。
 さて、前置きはともかく、その1でも述べた都と区の調査と、プラス筆者の取材による結果をまたご紹介しよう。

これが中小製造業の、現場の生の声だ!

(て、に、お、は、など分かりずらい部分は修正した、大田区産業振興課調査より)
「かつての円高により、単価は30パーセントも引き下げられたまま、で現在も取引しています、アベノミックスに期待はないです」。
「見積りや検討の依頼は増えているが、利幅がなく、競争は激しく、受注率は結局は落ちています」。
 他にも「見積もりの依頼ばかりで四苦八苦。見積もりのコストだけでも減益」、などの声は多数ある。
そしてこんな嘆きも。
「景気の低迷による売り上げの減少と単価の低迷、更に注文の多種、少量、短納期化と多重苦です」。
「円安による材料高で、利益は出ずです」。
「リーマンショック時と同じ不況感だ、周りが良いと報道されている分、対応に苦慮しています。受注が減っている確とした理由も見当たりません。全然受注が増えないままです」

 そして更にこんな角度からの声もある(こちらも大田区産業振興課の調査による)
「相手先、発注してくれる企業が大幅な人員削減をしたため、希望する納期の確保が困難になってきている」。
「取引先の海外移転は今後も進む予定で、売り上げは更に減少しそうだ」。
「取引先が国外に流出し、現地調達を要望しているため、現地との競合も出てきて、価格が大幅ダウン中」。
「大手企業の海外生産が大きく響いてきており、国内の調達が減少して売り上げは大幅ダウンしています」。
「円安になっても何も売り上げや受注量は変わらない。客先の海外生産シフトは更に加速している。理由は為替リスクの回避のためだそうだ」。

アベノミックス・・・大誤算?

 アベノミックスの誘導する円安は、海外生産する企業には、もともと現地通貨で取引するため、じつは円安とは関係ないということだ。
 大きな流れとしての海外移転は更に進んでいることが以上の声からもよく分かる。「為替をいじり、国内の生産を上げ、雇用を伸ばし、給与も上げる、そして景気を良くするんだ」というアベノミックスなるものは、一体なに。これは中小の製造業の現場から見ても明らかに机上の空論だったことが分かる。

予想外の?こんな現実の声も

「売上・利益ともに赤字が続き、工場の不動産を売却して、賃貸にして工場を使うことで人数も減らして頑張っている」。
「仕事量の減少から当社の労働者たちは月に3分の1くらいしか出社できていません。なんとか製造業が元気になるといいのですがーーー」。
こ れでは働く者の収入は減るばかりという、負の連鎖だーーー。

それでも元気のある人たちは僅かでもいないのか?

「オリジナル製品を持っているため、スモールメーカーながらも今期は順調です」。
「他社に先駆けて、3Dプリンター関連部品を取り扱ったため、今回のブームで、今は絶好調です」。
 やはりオリジナル製品を持っている。あるいは、流行の先端に関われる会社は、それでも「何とか強い」ようだ。少数派だが「頑張れ」と応援したくなる。

総論的な工場主たちの声

「うちは建設関連の機器のため今期は売上・収益ともに増加がみられた。だが、この原因は何なのかと考えると、消費税の前倒し現象の可能性が大きい、2014年4月以降の売り上げ・収益については、またまた不安が出てきている」。
「いつもアンケートを出していますが、悪くはなっても良くなることはないですね。それでも明日はよくなるだろうと頑張っていますが、希望が見えてこないです」。
「取引のある会社、工場などの廃業、解散などで、モノづくりの環境が徐々に小さくなってゆくことに大きな不安を感じています」。
「周辺の工場の撤退、倒産、みんな頑張ってきた人ばかりです。政治が悪い。モノづくりの人たちに対して愛の手がないです」。
「オリンピックやアベノミックスで騒がれているのは、恩恵にあずかる大企業だけ、零細企業には景気向上の実感はありません、数年先が見えないため、設備投資も出来ない状態です」。

ジャーナルで現実に訪ねた業者も、こう嘆く

そして、執筆のため、知人のおおたの中小の製造業者を訪ねると、「俺んとこは15年前くらいに新しい分野の製品に転換した、というかなんとか四苦八苦して転換ができた。当初は、それで順調だったけど、そういう製品はやはりライフサイクルが短いんだな、このためこれを造るのに必要な精密測定器や電子機器の更新をどんどんしないと追いつかないんだよ。つまり、売り上げに見合った更新のお金、設備投資の資金が必要で、これが売り上げに比べてなかなか貯められない、利益がそうそう載せられないからなんだよ。もちろん金融円滑化法(中小企業資金調達に関するもの)もあったが、これはまるで使い物にならないから資金調達は変わらずままならない。おれの工場は、たまたま工場の土地を二束三文で売った金があるから、それで働く人の給料は今のところは補てん出来ているんだが」。「見栄を張っているけど厳密に言うと赤字経営だな。これがもたなくなれば廃業だね。さよならさ。そんな工場は大森や蒲田周辺にはまだ掃いて捨てるほどあるよ」。

やはりマスコミ報道・専門家は信用できず

 前段で新聞のいい加減さを指摘したが、これはテレビ報道も同じだ、先日ある番組で「中小企業の現状は今」というイメージのものがあった。興味深く視せてもらったのだが、こちらも初めからまずはゲストが政府の所轄官僚。番組は「中小の景気は上向いています」から始まった。その理由は「日銀の短観」だと言う。つまり、都や大田区の用いている「東京商工リサーチ」の「景況は最低」という報告はまるで無視であつた。しかも、「我が政府は諸外国に比べあらゆる手段を用いて中小の支援をしているのだよ」、としていた。挙句の果て、司会者は「日本の中小企業は甘えているんですよね」といった発言まで飛び出した。とにかくアベノミックスを評価してごまをすろうという異様な世間のムードに驚くのみだ。まあ、個々の番組はともかく、「円安こそが日本再生の道」、のような論評を続けた政治家さん・経済評論家さん・某・有名なアメリカの大学の経済学部のじいさん教授さん。「アベノミックスでどうして景気が良くなるのでしょうか?」。
 最近有知識者とか言う人がもてはやされているが筆者は「日本の原発は安全です!」の大テレビコマーシャルで儲けた、エジプト通とか言う吉村作治氏(何故か今でも早稲田大学名誉教授だそうです)のインチキCMを思い出す。青空に大きな両手を広げて、すがすがしく、安全でーす、と言っていたっけ。最近の「有識者」とは大半はこんなものだ。

 みんながみんな大本営の発表を鵜呑みばかりの社会は怖すぎませんか。

☆☆(次回は製造業から転じて、おおたの各商店の最新データをご紹介します。前回の特集は3−5年前のデーターを使ったものでしたので、今度は最新で、乞うご期待)

(N)

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