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今思えば後のまつり
息子の自転車で颯爽と穴守駅あたりにでかけるのだが、反対方向から車が走ってくる。その時ブレーキをかける。と、そのまま左に横転してしまった。息子の自転車のサドルを低くしていたのだがサドルとハンドルをつなぐまっすぐなパイプがあってとっさの判断でそのパイプを越える動作ができなかった。今思えば息子の自転車でなく、ママチャリか徒歩にするべきだった。
倒れた際に左側の腰骨を折ってしまった。労災病院では大腿骨骨折と言われた。そのまま入院したのです。転んだ直後は見知らぬおじさんが路肩までひっぱってくれた。その後『油揚げ』で働く若者が付き添ってくれた。いのくら屋に電話してもらってカミさんを呼んでもらった。カミさんを待つ時間が長いこと感じてしまう。車が来るとなぜかほっとする。私を車に乗せるのに若者が体を前から後ろから抱えるのだがなかなか車の助手席に乗せることが出来ない。なにせ左足が痛みは無いのだが踏ん張りがきかない。
入院しても本は読めません
それでもやっと病院に行けたのです。自分では単なる打撲だと思っていたのですがレントゲンを撮れば骨折していたのだ。即入院、5日後に手術。その間腰の痛みはあまりなかった。手術当日、腰に注射を打たれ、その後脊髄に麻酔が打たれた時から手術がすんで意識が戻るまで3時間くらいあったと聞いた。手術から2日後に導尿管が抜かれ車いすを与えられるのです。最初はベッドから車いすに移るのが大変苦労した。車いすからベッドに移るのは簡単で右足を軸にしてベッドに転がり込むように横になればよいのです。リハビリは毎日1時間位やる。ほとんど俺より年寄りです、たまぁにスポーツしている若者に出会う。リハビリが終わればベットに倒れ込む。普段なら病院に入院したらさぞかし本が読めると言うが読めないのが現実で読めると言うの幻想です。
リハビリの大嵐
退院した後が大変で。店に顔を出すと、お客さんから「大丈夫ですか?」と言われる。あるおばさんは、「年なんだからきをつけなよ」とさとされる言葉が。自覚しなければと。店の脇には、児童館がある。そこの子供たちも「大丈夫?」と言われる。様々な人々から「リハビリ、リハビリ」とリハビリの大嵐です。カミさんは「店の脇の通路で歩く練習をしなさい」と命令されるのです。が、本人はなかなか体が思うように動かない、とうより、リハビリに対する情熱が生まれない情けなくなるのです。
羽田の町は幹線道路の他は道幅が狭い。漁村のなごりで車もすれ違う事が出来ない。杖を持って歩くと車が徐行してくれる。自転車も同じで、離れて通って行くのです。この世知辛い世の中での、気を使ってくれる事が嬉しく思っている。
(いのくら屋・安中正行)