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「最新版・大田区の中小工場と商店の今」
アベノミックス効果は? (1)

驚きの統計・数字、全国平均値より

 中小工場と商店の話に入るにあたって、まずは最近の統計を確認していただきたい。最新の2012年の国全体のものである。(以下、厚生労働省の賃金構造基本統計調査より)

 

正社員の平均年収   502万円 月給 31.3万円
正社員以外の平均年収 274万円 月収 19.6万円
正社員の平均「賞与」 92.5万円 正社員以外 18.8万円

ここで皆さんのご感想はーーーー??

 この記事がジャーナルに載る4月末頃には春闘の結果も出ているだろう。これは2年前の数字である。正社員以外とは非正規雇用者たちである。非正規雇用の人だと、これでは結婚・子育てどころではない。月に20万円以下では、どうしてもきついと思うのだが。それに働く者の賃金を上げないと、国がつぶれる。モノが売れないだけではない、将来は国が非正規雇用の人たちの生活を見ていかなければならないわけである。そうするとその時には国の年金・保険等は大変な支出になるだろう。消費税は最低でも20パーセントは必要になりそうだ。これはおかしい、大企業は社会的責任も果たさず、税もろくろく払わずひとりぼろ儲けなのだから。
 ここで更に注意していただきたいのは、上記の各収入には、「通勤手当、残業手当など諸手当も含んでいる」数字だそうである。ええ、まさか、残業、通勤手当??―――それ年収というのですか。誰もが国の統計の取り方もおかしいと感ずるだろう。

非正規雇用も増加中

 そして、前置きが長くなるが、これら非正規雇用は、2012年で「全労働者のなんと35,2パーセントもいる」で、1756万人もがおり、年齢別には若い人たちほど多いという。これではますます子育ては困難だ。ちよっと、今回の本題と脱線したが、まずは世の中全般のひどい様子を認識していただいて、それから大田の中小の工場、そして商店はどうなっているのか、を知っていただこう。

大田の中小工場と小売業はーーずばり「不調」そのものです

 まずは今回、このテーマを取り上げた理由は、珍しく最新の資料(昨年秋)が手に出来たからである。ご存じのように、一般的には資料は3−5年前のものが多く、ちよっと古い、ということが多かった。だが中身が中身だけに、最新の情報は誰しも興味のあるところだろう。
 そして予想は的中、まずは結論をはじめに言おう。大田区産業振興課(調査機関 東京商工リサーチ)の最新調査、昨年の2013年7−9月期によると、製造業・小売業ともに(不調・好調を7分類した規定の中の)一番最低の、「雨の降っているマークのつく不調」であった。皆さんも「やっぱりね」であろう。「好景気などというのは新聞テレビのたわごと」だ、みんながそう感じている。事実、庶民で景気が良いなどという人はどこにもいない。
 一方、新聞社はご存じの如く、もうとっくに値上げを済ました。自分たちだけは政府の恩恵にあずかっている。消費税も関係なしである。どうりで、アベノミックスを煽り、褒め称え、「景気は上向きだ」とするわけである。更に産業別のサラリーマン平均年収でも「情報・通信関連」のサラリーマンの収入金額はなんと全16業種中ナンバー2であつた(厚労省調べより)。

製造業・その中身と理由は

 さて中小製造業については本来詳しく図表で示しながらご報告したいところだが、紙面に限りがあるので、総論だけご報告させていただくことにする。
まずははじめに調査を受ける側の現場での大田の「声・意見・感想」をピックアップしてみたーーー(大田区産業振興課中小企業の景気動向調査より)

「リーマンショック時より仕事が少ないです、収益の増減というより仕事自体が出てこない、政府の景気の上向きという見解は、どんな企業を見て言っているのだろうか」、
「エネルギー価格が上がり、売り上げは下落、中小工場にとってはスタグフレーションの状態ですね」、
「あまりにも悪い状況なのでコメントすらする気になれませんよ」、
と嘆きと怒りの声が相次ぐ。

五重苦の製造業・中小工場

 次に調査の中身に入って、現場の挙げている「問題」の比率の多いポイントから紹介してみよう。
今回は利幅の減少がひどくなっているのが目立つ。また、円安による材料高、そしてそのマイナスの吸収は、中小に押し付けの様子が見て取れる。
 アベノミックスでの円安が始まって約1年が過ぎたが、大田の中小製造業は上記のように、不況のままである。お陰で、このことから中小の競争は激しくなる、利益も減る、機械設備も取りかえられず老朽化してにっちもさっちもいかない、と、さんざんのようだ。

 次にこれからの「来期」を事業者たちはどう考えているか、見通しは僅かでも期待できるのだろうか。大田の各製造業者の考える「来期の見通し」のアンケートは、トータルとしての「業況」はこれまた「期待できず」であった。

 

来期の見通しについてのアンケート (指数で表示)

業況   −43
売り上げ −32
受注残  −30
収益   −39
販売価格 −23
原材料価格 32
在庫     5
資金繰り −32

 

 業況はもっと悪くなるだろうで―の43、以下「−」のつく数字はもっと悪くなるであろう、であり、マイナスのつかない数字、原材料価格と在庫は唯一少しは改善されるだろう、と
いうことである。円安もそうそう続けられないだろうしというところか。いずれにせよ全体にはこれからも具合は悪そうで悲観的である。じつは1年前の「来期の見通し」指数も、今回の調査結果とほぼ変わりがない。アベノミックスで、中小製造業は何も変わらないままの不況である。
そして、雇用についての調査もあって興味深いのだが(指数で)

 

残業時間は  −14
人手     −2

 

 要するに、「人もまだ余っているし、残業時間も減るだろう」ということが見込まれている。これでははじめに見ていただいた、「働く者の収入はさらに落ち込むばかり」となり、たまらないわけだ。そもそも働く者の8−9割は、中小に勤務しているという事実は、ご存じの如くなのだから。

消費増税の苦難

 この絶望的な数字に加えて、4月からの消費増税への不安がある。納入先企業からは「増税分は中小側で負担しろ」と押し付けられるだろう、という工場がなんと全国平均で4割以上もあるという。これは商工会議所調査によるものだ。
 税は本来各企業の独自の負担なはずだ。それを納入側の弱者の中小に押し付けるとはーーーーちよつとねえ。不正があったら、政府が指導・意見するというが、そんなものをしかるべき機関に知らせたら、どうなると思っているのか。その下請けはもう二度と取引はしてもらえない。本当の現実を知らずに何を言うのか、親方日の丸の「官僚さんたち」は全て机上のたわごとである。原発規制ともよく似ていますねえ、腹立たしい。
 それこれゆえに、調査で現われたのは、やはりの「不調」の雨降りマークなのだ。

 

2013 7−9月期 2012 10−12月期
@売り上げの停滞と減少がひどい 65・7% 78・5%
A利幅が縮小した 30・3% 27・3%
B同業者の競争の激化 17・4% 19・2%
C原材料高に泣く 15・2% (この頃はなし)
D工場・機械の縮小・老朽化 14% 22・7%

(上記の数字は、その点に{まる}した会社数の割合、合計が百パーセントにはならない)

(N)

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