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どうなる、オリンピックと羽田増便と騒音・安全と−4
LCC−安さの裏で事故頻発

● 初めに関連事故ニュース

 このシリーズを書いているさなか、なんと、羽田も利用しているLCCのエア・ドウは、1月22日に、作業車を自社航空機の機体にぶつけて壊すという事故を起こした。この結果、22便から23便もが欠航となる。人件費のコストの削減が原因と思える。つまり、十分に練習・訓練していないためであろう。
 端から驚きのニュースになったが、前回は、LCCの主な値引きの理由の中の「整備費のコスト削減」のために、どんな危うい事が起きているかを紹介させていただいたが、今回は更に彼らの言う「人件費の削減」でどんなことが現実に起きているのかをご紹介したい。もちろん上記のニュースもその典型的な例なのだがーーーー

●やっぱり---人件費の削減 の先に、見えてきたこと

 シリーズ第2回でご紹介したが、人件費削減の主なものは、「初期のパイロット訓練コストを削減します。このために、既に資格を持つパイロットを他から中途採用します」
「乗務員を含めて社員の給料・待遇のコストを抑えます」
「客室乗務員の訓練を有償に、あるいは訓練期間は無給にします」であった。これだけ聞いても、ちよっとひどい会社だな、と誰もが思うであろうが、更に素人的にも不安に思うことは、「そんなに人件費を削って、パイロット・乗務員は、超過労働になっていないのか」という点である。何故なら我が国では、つい最近格安バス運行による大事故が起きたばかりであるからだ。原因はご存じの如く運転手の超過労働であった。そして、国交省はバスの運転手・雇用主については、すぐに一定の規制をかけたのだがーーーあれれ、航空機は別物なのか?

●問題・事故が起きてから でないと動かない国交省

 「日本人は安全に対して異常にうるさい」、というレッテルで、安全性の問題に対抗しようとする「何でも自由派」が国内外にいる。また、役所にも「もし、これこれが起きたら」という推論はきりがないと、反論する輩も山といて、これまたみなさん御存知の如くである。そこでこの「何でも自由が一番」の人たちのために、筆者は事実だけを紹介してみたい。あとは読者のみなさんの判断であろう。

●事故のオンパレードで

☆2012年。LCC各社の勤務状況の調査結果。乗務8時間という航空業界の規定に対して、格安航空は平均9時間36分の超過勤務であった。更に客室乗務員は13時間に対して15時間34分という超過。
☆また、韓国アシアナ航空では、操縦士の経験5年未満のパイロットがなんと139人中133人もいた。この会社では、既に7件もの事故を起こしている。
☆2013年6月 航路を間違えて別の滑走路に着陸したLCCの会社がある。また、規定の航路より、はるかに低い場所を飛ぶトラブルも。
☆スカイマークでは、社長が機長の判断に激怒し介入。機長を勝手に交代させるという無茶苦茶の法律違反。
☆エアアジア・ジャパンでは、なんと、尻餅機体の航空機でパイロットを訓練するという驚いた常識。
☆スカイマークではパイロットが操縦席で記念撮影し、バレて、解雇処分になるが、同社はその3か月後には平気で再雇用。
☆韓国LCCは、島根上空で乱気流に対応せず乗客2人が骨折。
☆LCCのノックエアー、2013年5月タイ・チェンライで滑走路オーバーラン。その3か月後にバンコクでもオーバーラン。更にその僅か2か月後にはタイ・ウドンタニでオーバーラン。その他着陸時に車輪が外れるなどLCCは事故続きで、タイのマスコミの非難を受け、運輸大臣が監督責任を取って辞職というお粗末。
☆中国の武漢天空空港では、LCCの幸福航空が、なんと飛行するための重量がオーバーで、乗客を7人も降ろしてようやく飛び立つという考えられないハプニング。
☆タイでは格安航空の客室乗務員が、極端なミニスカートで(キャバクラのように)対応している、として、厳重注意という珍事件も。筆者はミニはともかく、これでいざの事故の時にお客を本当に脱出させられるのか、の疑問を抱かざるを得ない。
 なお、読者からの要望で上記について可能な限り実名を載せたが、前号述べた「イメージが悪くなったために会社名を変えて」、華々しく宣伝・再スタートした会社とは、エアアジアジャパン→バニラエア(ANA傘下のLCC)である。

●やはり、訓練不足と超過 労働か

 こうして事故や調査結果を見てくると、当然すぎるほど「安くゆえ」の無理がある。考えてみれば、いわゆるスーパーというものが日本に現れ始めた頃、その安さゆえに数々のまがい商品が並べられ問題が起きたこと。また、格安長距離バスについても、いつかあのような事故が起きるだろうことは、みんなが予想していたことであった。そして、やはりそれは起きたという現実。格安航空の墜落事故も、原因はパイロットにあるのか、機体の整備にあるのか解明されてはいないものの、いずれにしても墜落という命にかかわる事故は幾つも起きている。

●羽田とLCCの不安

 現在羽田には、この格安航空は国内便では2社が既に乗り入れている。スカイマークとエア・ドウだ。これは区民側としては反対しにくいものの、五輪のために新たに増枠をとなると、大田の人たちにとっては、やはり、墜落事故や滑走路を外したり、規定の航路を外れての低空飛行による危険と騒音が一番怖いし悩ましいと言える。

●増便はあるか

 今、羽田の離着陸料金が高いため格安が売り物のLCCは、羽田にはこない、増便しないと、専門家やマスコミたちは軽く見ている。が、問題はそこだけではないはずだ。格安航空各社が各々の国で一定の発言権を持ち、離着陸に各国の利害関係がからむとなると、政治的な圧力が生じて、国も安易に圧力に屈し、大幅な許可をするとなりかねない。それに、成田や関空には既に格安航空は数社が乗り入れてきている。
とにかく今の政権は、「国民の頭越しに」が得意技である。しかも国交省はご存じの住民・国民無視のお役所である。更に新聞も、国交省の発表をまるで決まった事実かのように記事にするという「とんでもないジャーナリズムなき報道」ぶりである。「成田と羽田で、離着陸枠が年間68万回分不足、本命は羽田枠」、などと報道されると、事は端から違ってくるのではないか。

●諸外国の対応は?

 最後に、格安航空に対して、諸外国の市民団体はどう対応しているのかをご紹介したい。ヨーロッパでは、格安航空の安易な利用は避けるべき、反対だとする市民団体が多い。理由はジェット機が飛ぶには大変な環境問題が発生する。安いからと気楽に頻繁に利用するのは問題だ、としている。もちろん、主として安全性、騒音などを大きく取り上げている空港関連の市民団体もあるのだが。さて、これからの政府の動きを注視していきたいものだ。

(羽田空港を監視する会 N)

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