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どうなる、オリンピックと羽田増便と騒音・安全と−3
L.C.C.は危ないのでは

● L.C.C.はなぜ安いのか、の不思議

前回も示した、会社側及び業界側の言う安い理由だが、おさらいすると
1、運航するコストの削減
2、人件費の削減
3、3――7は(前回を参照)してください

 つまり、コスト減の出来る理由には7項目あったが、どうも問題がありそうなのは上記の1と2ではないか、と筆者は指摘した。

 今回はその中で、1、の運航するコストの内容を紹介し、分析してみよう。

○一定の機種をまとめ買いするから、安く買えます。また、 コストも削減になります。更にこれでパイロットの訓練も 乗務員の訓練も最小コストになります。
○こうすると整備についても機 種が限られるから、部品等や機材、整備要員の訓練コストも下がります。
○そして整備施設も自社で持たず、他社に委託します。

 上記のはじめの○では、同じ機種にするから機体自体安く買える、これはいいだろう。だが気になるのはパイロットも乗務員も、要するに単一機種だから「馴れやすい」「覚え易いのでコスト削減 」という部分である。そうすると、次の○の整備の話もそうだが、たった一つの機種についてしか知識がなく、ヒコーキに一般についての総合知識に欠ける、という欠点があるのは明らかだ。それで本当に良いのだろうか。
 これは例えば、同じ輸送機械で例えると、マツダのワンボックスカーの整備しか分からない、同じマツダでも他の車種は分からない、トヨタの車はむろん駄目、日産もホンダも分からない、そんな整備士の整備するヒコーキに乗るということになる。また、運転手・パイロットにしてしかりだとすると不安は募る。そして、更に、整備の施設は持たず、他社に委託する、という話も不安だ。
 整備を他社に委託するという部分は、ある程度は今では大手も行っているのだがーーー。
 ここでヒコーキの整備と安全性についての解説をすると、とてつもなく長い話になるので、この「素人的不安」の結果は、では現実に既に何が起こってしまっているのかーーーご紹介したい。

●国内L.C.C.で発覚した問題

2006・3 修理の期限を9か月過ぎても運航を続け、国交省より厳重注意勧告。
2013・8 ネジの欠落などで、整備士規定違反。国交省が厳重注意。
2013・10 尾翼検査もれで、国交省厳重注意。
2013・11 条件満たしていない経験不足の整備士を整備の責任者にして運航させていた。国交省厳重注意。(厳重注意とは、過去に例のない相当厳しい注意である)
 これだけでも背筋がぞっとするのに、じつは、「とんでも」は、まだまだある

●飛行中に屋根が吹っ飛んだ??

 海外のL.C.Cでは、整備不良で緊急着陸した。着陸時になんと車輪が外れヒコーキは滑走路外に突っ込んだ。気象レーダーが壊れたまま何便も飛ばし、事故を起こしたーーー飛行中に屋根が吹っ飛んで墜落した。など「まさか、のまさか」は山とある。筆者が掴んでいるだけでもこの10年で墜落事故は5−6件はあるのだーーーーーー。
 このような事故歴から整備についてはL.C.C.はいい加減だ、と言わざるを得ないのが現実だ。こんなヒコーキが大田区の空を飛ばれたのではたまったものではない。空から何が降ってくるか気が気でない。ぞっとする。この原稿を書いている年末にも着陸時に車輪のタイヤが裂けた事故が隣国のアジアで発生している。むろん格安航空が起こした事故だ。

●どうしたの、新聞社さん?

 これらの事故は、本来なら記事になり、みなさんが知っているはずなのだが、日本では大半は報道されていない。理由は、L.C.C.自体は「安い」を武器に今後かなり発展していくだろうからである。つまり、年末の旅行雑誌・新聞などを見てみると、「格安航空で上手に海外旅行しよう」「あなたでも行ける格安航空の旅・なんと数万円で豪華海外旅行が」などという記事が氾濫していた。つまりは、メディアさんはL.C.C.の欠点を指摘して広告をもらえなくなるのが心配で、事故は最低限しか取り上げないでおくという姿勢なのであろう。これでは、まるで東電事故なみではないか。メディアは今日、明らかにメディアの責任を果たしていない。広告費欲しさの金儲けのみである。

●まさか、社名まで変えて知らんふり??

 最後に知っておいてほしい事実がある。格安航空各社は、事故などの不都合が起きると、なんと、平気で「会社名」まで変えて、そ知らぬふりで営業を始める。現実に日本でも某会社は、この年末に「新たな航空会社が誕生」として大宣伝を打っている。じつは、これはつい最近、事故でイメージの悪くなったばかりの会社が社名を変えたのである。すごい常識の時代になったことをお忘れなく。

 次回は、パイロット・乗務員のコスト削減による市民側の心配、超過労働と事故についてご紹介する。

(羽田空港を監視する会 N)

【写真】 羽田空港・旧整備場地区に拠点を構えた日本のLCC・スカイマーク社の大型格納庫。かつてはJALジャンボ機の重整備ハンガーとして稼働中であった。スカイ社は2014年末からエアバスA380機の導入(6機)を計画中である。
 同社の運航をめぐっては、機体や整備の不具合から再三国交省から安全指導を受けている。

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