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読者の方から、いま上映中の映画の案内が届きました。
イスラム世界をどのように考えるかによって、さまざまな感想があり得るかもしれません。そのことも含め以下に紹介します。
いま、神田岩波ホールで上映中(2月7日〈金〉)のこの映画を是非見てください。
映画館がない国に女性映画監督
あの広大な砂漠の国(日本の約5倍)、石油産出国(人口2700万人)サウジアラビア王国(首都リアド)には映画館とか劇場はひとつもありません。この国では映画館など建設が法律で禁じられているのです。
規制といえば、酒も豚肉もダメ、女性は10歳の頃からアバーヤと呼ばれる黒い布で全身を覆い、ヒジャブと呼ばれる黒いスカーフで髪を隠し、肌も露出してはならないのです。
そのほかにも女性の自動車運転もダメ、女性の一人歩きも旅行もダメ。結婚式以外の集合もダメ。最近やっと女性の参政権が認められ2015年からの実施とか……何から何まで因習で固められた国です。
このような国になんと初めての女性映画監督(ハイファ・アル・マンスール)がデビュー、長編映画を作ったのです。これが「少女は自転車にのって」です。おまけに2012〜13年に世界各国の映画祭で多くの映画賞を手にしたというのですからびっくり仰天です。
少女に託された希望
映画は10歳になるお転婆少女ワジダが、男友達のアブドラと自転車競争をしたいばっかりに自転車がほしくてたまりません。しかし女の子が自転車にのることは母親が認めません。それでもワジダは少しも諦めることなくお金を集めて自転車を買う算段を考えますが……。そしていくつも超えなければならない大人たちが決めた因習。
映画は、この国で少女が女として直面する生活の厳しさを見つめていきます。また一方では従来からの慣習に従いながらもワジダに未来への希望を託したいと思う母親のまなざし……自分の道を何とか見つけ出そうとするワジダの根性と勇気が丁寧に描かれています。この母親と娘の絆には誰もが共感するでしょう。そして希望に満ちたラストシーンでは観る者が爽やかな感動に包まれることでしょう。
ハイファ・アル・マンスール監督は、世界の子どもたちの未来が明るくなるようにと願っての映画作りであったことでしょう。デビュー作に拍手を送りたいと思います。
日本でもこのような子どもたちをじっくりと描いた作品が作られるよう願って止みません。
※2月7日以後はしばらく間をおいて、横浜、都内でも上演を予定しています。
(西六郷在住・高橋栄)