ホーム > バックナンバー > 2014/01 > 多摩川七福神
皆様の中には今年一年の幸運を願って、年の初めに七福神めぐりをなさる方も多いのではないかと思います。大田区内には「池上七福神」と「羽田七福稲荷」があり、かなり前になりますが本誌でも取り上げたことがあります。
七福神めぐりの起源ははっきりしませんが、室町時代まで遡ることができるようです。それが江戸時代になって庶民にまで広がり、現在の七神が定着しました。面白いのはこの七神の国籍がインド、中国、日本とばらばらで、国際的なことです。小さな無人島の領有権をめぐっていがみ合い、一触即発になりかねないどこかの国の人には、是非一緒に七福神めぐりでもして頭を冷やしてもらいたいものです。
さて七福神とは
七福神のうち、恵比寿は釣竿や鯛を抱えていることからもわかるようにもともとは漁業や海の神ですが、現在は商売繁盛の福の神として知られ、唯一の日本出身の神様です。大きな袋と打ち出の小槌を持ち、米袋に乗った福々しい姿が古くから親しまれてきた大黒天は五穀豊穣、財福の神ですが、もともとはインドの出身、ヒンズー教の戦闘神シヴァの化身です。毘沙門天もインドの神様で財宝富貴を授けて大願成就をもたらすとされています。弁財天は唯一の女神で学芸全般を司っていますが、こちらもインド出身です。福禄寿は中国の神様で福(幸福)、禄(俸禄)、寿(寿命)を授けるとされています。寿老人も中国の神様で樹老人とも書かれ、樹木の生命力が長寿を象徴しています。最後の布袋様は唯一実在の人物をモデルにしていて、布袋和尚は中国唐代末期の僧です。日頃から大きな袋を持って歩いていたのでそう呼ばれたそうで、袋の中の財宝で貧者を救うともいわれ、福神として人気があります。
日本人は初詣では寺社に参詣し、結婚は教会で、葬儀は仏式でと統一性がなく、またバレンタインデーにプレゼントをしたり、クリスマスを祝ったりと全く節操がないといわれることもあります。でも七福神だってルーツはバラバラです。かたくなに国粋的、排外的になるよりも、とてもおおらかでいいのじゃないでしょうか。
パワースポットも散在
このたび、新田神社を中心にした矢口、下丸子地区に「多摩川七福神」が誕生しました。場所は新田神社(恵比寿)、氷川神社(大黒天)、十寄神社(毘沙門天、)延命寺(寿老人)、東八幡神社(弁財天)、頓兵衛地蔵(布袋)、矢口中町会稲荷社(福禄寿)の7か所です。七福神を巡るコースの周辺には、南北朝時代の新田義興伝承をはじめ数々の名所やパワースポットが散在しています。本誌に取り上げたこともある、昭和初期に満州に渡った開拓民の多摩川農民訓練所跡も周辺にあります。全行程を1時間30分から2時間くらいで回ることができますから、正月休みで運動不足だという人にはちょうどいい運動かもしれません。多摩川七福神のキャラクターは蒲田にある日本工学院の学生さん達が制作したそうです。
御朱印帳や案内マップを置いてあるのは新田神社だけなのでここから歩き始めるのがいいでしょう。御朱印帳は2000円とちょっと高めですが、地元商店街で使える割引券などがついているそうなので、お店をのぞきながら街歩きを兼ねてぶらりと出かけてみてはいかがでしょうか。
(多田鉄男 新蒲田在住)