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今井さん最後の仕事としてのブックレット
社会科教科書採択にあたって私が考えた事

 大田区の元教育委員長の桜井光政さんの講演記録のブックレット作成が今井さんの最後の仕事になりました。この最後の打ち合わせをしたのが、今井さんが亡くなる二日前の土曜日、作業はほぼ終了し、これから印刷に向かう段階でした。

 悪い予感はかけらも

 翌日は「公正な教科書採択を求める大田区民の会」(以下、教科書の会)の例会だったのですが、ぼくは前の用事が長引き、今井さんに「今日は出席できません」と電話で伝え、いつものように「わかった」と言われて電話を切りました。
今井さんが亡くなったのはその翌日の朝。忌野清志郎じゃないけれども、「悪い予感のかけらも」ありませんでした。
火曜日、その教科書の会の世話人会のあと、今井さんの家の布団の上で動かない今井さんを見ても、なかなか事実を受け止めることができませんでした。
ともあれ、残った2名の編集担当(ぼくと野口さん)で、といっても実務は野口さんにまかせて少しだけ残った部分を仕上げ、印刷し出来たのがこのブックレットです。

 育鵬社のダメさ基本的に

 ところで、昨年5月20日に行われた櫻井さんの「教科書採択にあたって私が考えたこと」という講演がとてもよかったので、夏休み期間に藤原進さんにテープ起こしをお願いし、テープ起こしを野口さんがリライトし、櫻井さんに赤字を入れてもらい、何度か体裁を相談し、今井さんが一太郎で組版し、図版の入れ場所などの打ち合わせを重ねながら、このブックレットはできあがりました。
 ぜひ読んで欲しいのですが、櫻井さんは講演、基本的には帝国書院と育鵬社の教科書を比べる形で(一部で他社の教科書の優れた部分も引用しながら)具
体的に、21点の例をあげて、なぜ育鵬社の記述ではダメなのかということをすごくわかりやすく提起しています。ひとつだけ例をあげると、「オムシャ」
という松前藩とアイヌの人たちの交易の場面で、両方の教科書に出ている写真を示し、その文章とともにアイヌへの搾取の構造を見えにくくする育鵬社の挿絵の使い方を俎上をあげています。教科書の画像を示しながらの講演だったので、ブックレット化に手間取ったのですが、教科書からの引用の写真を入れて、読みやすいブックレットができたと自負しています。

 ナショナリズムはおろか

 そして、櫻井さんは「ブックレットの発行に際して」で、控えめに以下のように締めくくります。
 〜〜〜 「他方、採択された教科書は、愛国心と自尊感情に配慮した作りになっていましたが、そのあまりナショナリズムの歯止めとなる力が弱いように感じました。
 最近近隣諸国でのナショナリズムの高揚を感じます。これに対しては冷静な対応こそが望まれるのであって、わが国がナショナリズムの高揚をもってこれに対抗するのは賢明な態度ではありません。近隣諸国を侵略した過去を持つわが国であれば、誠実かつ忍耐強く平和への努力を続けることこそが、現代を生きる日本人の誇りとすべきことだという視点が特に重要な時代になって来ているように思います」。〜〜〜
 ぜひ、購入して読んでください。300円+送料です。申し込みはメールで kyokashotakumin@gmail.com

(鶴田雅英)

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