ホーム > > バックナンバー > 2013/12 > どうなる、羽田(1)
●やっぱりか・そこのけそこのけオリンピック様が通る
10月に新聞各紙が、「五輪に向け発着枠増強 検討本格化」という記事を載せた、その内容は羽田の発着回数をもっと増やすというものだ。今でさえぎりぎりの羽田なのに、天下御免の「五輪さま」に向けて、体制を整えるのだということらしい。そこで例の有識者会議という怪しげなもっともらしい検討会議では、今、「国交省さま」の出す5つの案が検討されているという。
●5つの案・呆れた「だし」用案の検討
【増設される羽田空港国際線ターミナル】
この5つとは、1、羽田に5本目の滑走路をつくる、2、都心の上空の航路を認めて、要するに現右旋回の規制を大幅に緩和する。3、近場の茨城空港の活用の拡大 4、横田基地を民間空港として使う 5、東京湾岸等に首都圏第3空港をつくる、という5案だそうだ(朝日新聞による)。
しかし、はじめから誰がどう考えても話にもならない案は、1、羽田に新たな滑走路をつくる、 5、湾岸等に第3空港をつくる、であろう。これらは、いうまでもなく五輪に間に合うはずもない。しかも、羽田の5本目の滑走路は「何処に造るの」というより、「一体何処の場所にそんなものを造るスペースと空路があるの」と言いたいところだ。大田区民なら誰もが知っている。今までも造りようがなかったのに検討するとは不勉強もはなはだしい。利権だけの族議員がわめきたてたのか。最近完成した沖合の滑走路も7年はかかった。いや、中・長期の将来も見据えての検討だ、と言い訳したいのだろうがもともと巨額の費用もかかる話だから、予算の手当てなどもあり、五輪でも名目に立てない限り簡単な話ではないだろう。
●あるものを(有効?)(ご迷惑?)に使う
結局は、横田も米軍は譲らず、それをしつこく要求する気もなしの政府だろうし、一方茨城空港はアクセスの困難から、有効活用は端から無理と結論づけざるを得ないだろう。本当は茨城とて、高速モノレールでも引けば都心にすぐだが、成田と都心のアクセスでさえも、くだらん理由をつけて直通鉄道ひとつ引かない国交省さんの本音としては、検討案は当初から決まっており羽田・成田の増枠であるのは間違いない。これが一番イージーでしょうねぇ。実はそうではないのだがーーー。
●まさかの詰め込みで
【たけなわの国際線ターミナル増設工事】
両空港の発着枠は合わせると現段階で年間68万回もだが、なんと国交省は2015年までに74万7千回に増やしたいそうだ(朝日新聞記事による)。じゃあ7年後のオリンピックの時はどうなるの、と聞きたいが、ここについてはまだ新聞記事等による発表もなしである。
それでも、多少の増便の枠に余裕があるとされる成田の活用については後ほどお話しするとして、ここではともかく、羽田の増枠について新聞発表をみてみよう。
まずは羽田には国内便と国際便がある中「国際便」についてだが、来年3月末には早くも今までの年間6万回を9万回に増やすという。
これは1日あたりにすると40便(離着陸で80回)の増便となるそうだが、羽田を抱える大田区への相談などまるでなしで、まずは方針を一方的にお国ががっちり決めてしまうところは、いつもの大胆な国交省さんらしく自治体の意向の無視、民意の無視が、また始まったと言える。そしてこの計画の決定の後は「国で決めたのだから、あとはどうする、あんたら考えてくださいよ」としたごり押しをするつもりであろう。
ここで、どう考えても疑問に思うことは、40便もの増便を、それでは、具体的にどの滑走路を使って、どんな時間帯に、どのルート・上空を、どんな方法で飛ばすつもりなのか。
しかも、羽田の国際便ターミナルビルはすざまじぃ勢いで既に増設中だ。
●勝手に決定という航空会社の一部割り当て
また、新聞各紙によると更に国際便増枠の新規の割り当て枠までもがこの10月に決まってきたようだ。増枠が可能か否か、
見極めもしないのにである。内訳は半分の20便が国内航空会社に割り当てて、残り半分20便は海外の航空会社に配分するとしている。
●羽田国際便の割り当て
20便は海外の航空会社に―20便は国内の航空会社に―
そのうち 11便がANA 5便がJAL、残り4便も海外航空会社にが、早くも国内の会社への割り振りはご存じの「不公平な配分」として、JAL側が異議申し立てをし裁判も辞さないとしているという。残りの、国内割り当て(20便の残り)4便は、海外の航空会社の割り当てが決められてから後にまた配分を決め直すようだ。なかなか複雑だが、それには複雑にならざるをえない理由がある。
●決められないのはL.C.C.という類の新航空会社
みなさんは「L.C.C.」という文字というか会社の総称のようなものを新聞等で何度も目にしていることと思う。これはローコストキャリアの略で、要するに格安航空会社のことである。これらの会社が今日世界各国で乱立している。日本国内でもすでに12−3社が設立され、現実に飛んでいるし、日本を除くアジアの全域では筆者の知る限りでは16社くらいもが設立され、現実に運航されている。これらは複数の企業が国境を越えて資本参加し、運営されているものが多いゆえに採算が合わないとか、早速の事故でイメージが落ちたなどとなると、すぐに解散してしまう。「ええ、それはなんだ」と皆さんここで直感的に不安を感じられるだろうが、この格安航空会社は今後はどうなっていくのか。つまり、これら企業が大きな力をもって、それなりに力のある存在になっていくのか否か、現時点では専門家も国交省も見極めにくい。力を持てば政治的な駆け引きも出てくるだろう。ゆえに、海外の航空会社の国際便の枠20便と、先の残りの4便の海外航空会社への割り当ては、まだ決めかねているのだろうと推定できる。
●羽田にL.C.C.はなぜ困るのか
国交省の未決定はともかくも、では羽田とL.C.C.とは、「地元大田区民としてはどんな心配・迷惑があるのか」。結論を先に言うと、L.C.C.は、「コスト削減による安値の実現」の航空会社ゆえに、墜落等の事故の危険性、騒音のまき散らしと大気汚染、などの可能性を多分に持った会社・ヒコーキであり、羽田で多く離着陸するとなると、区民および場合によっては都内各区や川崎などコースにあたる周辺住民にとっては「ご迷惑と安全性に問題がありお断りだ」ということになる。
事実このヒコーキたちは、過去のデーターから調べると、墜落事故を起こしたり、コースを外れて低すぎて飛んだり、規定外の時間を飛んだり(つまり騒音のまき散らしの不安)、機体の整備についてもいい加減そのもので、国交省から整備の不備や整備士の資格なしの問題、運航のデタラメの問題、などで何度も厳重注意を受けていたり、の「危険と迷惑のダブルパンチの会社」たちだ。
五輪さまが何と言おうと、とにかく「騒音と大気汚染の増加と墜落の危険」だけは、住民側としてはご勘弁願いたい。これが大田区民の本音であろう。事実、地元区民はヒコーキが墜落した事故も、つい昨日の事のように覚えているし、戦前には街中にも墜落炎上した事故があったのはみんな周知の事実だ。羽田地区の主婦が「危険は原発だけでもう十分です」と言った、そのため息が区民の本音であろう。
さて、次回は新たな増便枠で羽田にも飛んできかねないこのL.C.C.について、ではそれらはどれほど危険か、はたまた意外や安心・安全そうなのか、最新の実例を示しつつ皆さんに判断してもらうことにしよう。
追伸 羽田にヒコーキを見に行くと、えらい黒い廃棄ガスを出して飛んでいるヒコーキがまだたくさんあるし、国際便のビルの大増設工事はたけなわです。
(羽田空港を監視する会 N)
【国際線駐機場。手前はパンダ模様に塗装された中国路線機。右後方は中華航空(台湾)機】