「障害の社会モデル・骨格提言・総合支援法」ってみんなが興味なさげな話を地域でちゃんとシェアしよう! 9.17集会
この集会、半年前から、「とにかく集会」というスケジュールと会場押さえからスタートした。当初は「障害のある社会に困っています!9.7集会」という名称であったが、討論を経て、標記の長いタイトルとなった。障害者や関係者、家族だけに押し付ける話ではなく、まちで暮らすみんなこそが知っておくべきとても重要な話なのに、興味を持てない話。それをどうにかしたい、という思いを強く反映しているものだ。
集会の冒頭で、共同代表のひとり、大内伸一さんが、主宰である「福祉フォーラム城南」の活動経過を説明した。「おおたジャーナル」では、昨年5月号と12月号で経過報告をしているが、改めて振り返る。
2007年から、障害者自立支援法の影響を考え、共有するために、「大田区の障害福祉を考えるおおたフォーラム」を、毎年、開催してきた。
2010年には、国によって自立支援法廃止と新法制定が確認され、翌2011年8月には、障害者総合支援法の実現に向けた「骨格提言」が発表された。「障害者総合福祉法の骨格に関する総合福祉部会の提言」いわゆる「骨格提言」とは、国連障害者権利条約と、改正障害者基本法の精神に基づき、権利に基づく障害福祉の新しい制度の方向性を、網羅的に規定したものだ。その柱は以下の6点。
この年、「おおたフォーラム」は、はじめて大田区の後援を得て「さようならっ!自立支援法/ いらっしゃい!総合支援法」というサブタイトルで開かれた。3.11の地震の影響で3月13日のフォーラムは半年延期され、実現の運びとなった。同じ2011年の末には、「さあ、障害者総合福祉法を、ちゃ〜んと成立させようではありませんか。私たちの力を添えて」という呼びかけのもと、「総合福祉法をちゃ〜んと成立させよう!12.19集会」を開催した。この実行委員会は大田区の枠組みを超え、品川、目黒へ呼びかけを広げた。この枠組みこそが、現在の「福祉フォーラム城南」のもとになっている。
しかし、翌年の2012年には「障害者総合支援法」が登場し、「骨格提言」にもとづく新しい障害福祉の流れは一度命脈を絶たれた。
深い絶望の中から、僕らは再び「骨格提言の実現をめざす」という社会合意の形成へ向かおう、と真剣に考えてきた。そして年末には、こう述べてきた。
「障害を含め、支援を必要とする状況は、<本人の責任による問題ではなく、本人と周囲の環境の関係性による>ことを承認しなければ、社会という物質でない存在は立ち上がってこない。「権利に基づく障害福祉」に変えていくことの必要性について、障害者権利条約と、骨格提言を材料にしつつ、地域で論議を巻き起こすことによって、それを実現していこうと考えている。
そして、その具体的な方法として、われわれは2つのことを考えている。
それは、可能なことなのだと、考えている」。
9.7集会はこのミッション達成のために構想され準備されてきた。
◆Part-1 「障害の社会モデル・骨格提言・総合支援法」についての、わかりやすい話
日時と場所とテーマは決まり、ではそこに当てはまる語り手は誰なのか?かなりの試行錯誤があった。そんなころ、実行委員会メンバーのひとりが、古い面識があり、最近フェイスブックで交流を再開したという、ある人の話題を持ってきた。それが、田中正博さんだった。社会福祉法人全日本手をつなぐ育成会 常務理事、政策委員会委員(内閣府)。正直を言えば、僕がこの間、敵と考えていた人だ。総合支援法に賛成した大きな障害者団体の、オピニオン・リーダー。一方で、早くから当事者中心の、先駆的な実践を手掛けてきたことで知られる人でもある。田中さんは大田区在住で、彼の住まいの近くで、一度酒を飲んで話をしてみることになり、福祉フォーラム城南の主要メンバーが打ち揃って参加した。
腹蔵ない話をして、田中さんが僕らと共通の視点であることを理解し、なんだ、この人は敵じゃあない、と考え直した。むしろ、力を合わせていくべき仲間だ。その夜に講師を依頼し、快諾いただいた。「わかりやすい話」は制度の解説に終始するよりは、「社会モデル」をいろいろな人にイメージしてもらえる事例中心の話に、というリクエストも理解していただいた。
結果、それは正解だったと考えている。今まで決して僕らのステージに乗ってくれなかった「育成会」の、しかも全国組織の幹部が、僕らの集会でメインスピーカーになる、ということはとても大きかったと思う。参加した障害当事者、関係者の顔触れも従来と少し異なっていた。田中さんは終了後の交流会にも残っていただき、さらにさまざまな討論をした。今後に向けた相互理解と思いの共有確認をできたと思う。
◆Part-2 パネルディスカッション「地域でちゃんとシェアしよう!」
大田、目黒、品川の地域を代表したパネラーが、障害の社会モデルを地域でひろげていくための課題について、何度かの応答を繰り広げた。
特に大田区のパネラーを庄嶋孝広さんにお願いしたのが従来と異なる。大田区ではさまざまな場面で庄嶋さんと一緒になる機会は多いが、あえて障害福祉の業界の外にいて、感じることや提案をもらえれば、という趣旨でのリクエストだ。
目黒からは松尾由理江さん。特定非営利活動法人たまごの会の地域活動支援センターふれんずで施設長と支援員・相談支援専門員を兼務。品川からは、福祉フォーラム城南の共同代表である千田好夫さん。
会場の関係もあり、時間の制約の中で、パネラーのコメントも一人5分、1周してまた5分、というような形になり、消化不良だったと思う。とりわけ会場と応答する時間が作れないのはいつものことで、できれば、課題を進化させていくため、の少人数でグループ討議ができるような集会を、今後開催してければ、と思う。
(茂野俊哉)