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全国大会とその後の情勢

K. T. 

■■ 国労全国大会は闘いの方針を堅持 ■■

 八月二十一日、二十二日の両日、東京、永田町の社会文化会館で国労の第六十三回定期全国大会が開催されました。この大会は五月二十八日の東京地裁による反動判決に対しどのように戦線を再構築するのか、国労内外とりわけ闘争団にとってもっとも注目される大会だったと思います。また、地裁反動判決を喜んだ、自民党、JR総連、JR連合も国労が判決に打ちのめされ右へ路線転換することを強く期待つつ注目していました。五、二十八直後、自民党は国労に対し(1)分割民営化を認める(2)控訴はしない(3)JR総連、JR連合との和解という「三条件」を突きつけましたが、それは何ら担保さえ示さない、ただテーブルを作る条件でしかありませんでした。旧与党である自民党、さきがけ、社民党の三党は三人委員会を作り運輸省を交えた会合を何度か繰り返し、大会に向けて三条件への屈服を迫ってきていました。東日本を除くJR各社も国鉄改革法の大会での承認を交渉の前提条件にすると言明していました。大会は二重三重の圧力で包囲されていたと思います。

 大会前日の二十日の全国代表者会議において本部一部中執は「補強議案」と称するものを提出し、二十一日の大会当日それを配布するという強引な行動に打って出ましたが、それは方針原案とはまったく違い、三人委員会の要請にこたえる右への路線転換を含む内容になっていました。(1)「国鉄改革法を認める」と明記し、その後は言葉をあいまいにしながらも(2)不当労働行為係争事件を取り下げる(3)国労の名称変更を含む単一組合の解体、七分割と連合体化(4)JR連合との共闘(5)三人委員会への闘争団問題の一任の五項目であり、そうしたことが、大会での中間答弁や大会前の一部執行部の言動で明らかになったわけです。闘争団問題の早期解決のために、許される限り譲歩するという口実によって、実は右へ路線転換するために闘争団問題を決着させるという本末転倒もはなはだしい内容だと言わねばなりません。大会冒頭の高橋委員長発言はこの五項目の一部を遠まわしに批判し執行部の不一致を垣間見せました。

 大会での代議員発言の大半はこの「補強議案」に対する意見にさかれました。「運動方針原案とはまったく違う路線転換を含む補強議案を当日配布することは組合民主主義を破壊する行為であり即刻撤回すべき」「改革法を認めるなどの内容は一切認められない」「組合の七分割は一層企業内化を進め弱体化する。国労の単一組織化を守れ」「国労の闘いは国労だけのものではない今まで支援してきた労組、仲間にどう申し開きするのか。白紙撤回せよ」など、補強議案撤回の発言が相次ぎました。一方、数人が「現在の到達点では闘争団問題は政治解決しかない」「早期解決が求められており、それには三人委員会に努力を求めるしかない」と、路線転換ではないという立場から補強議案賛成の発言をしました。二日目、すべての代議員発言の終了後、取り扱いが議事運営委員会に付託され、結局「補強議案」ついては方針と切り離して継続討議扱いとする、「全面解決を図るときには臨時全国大会を含む機関会議を開催して決定する」という二点に集約され、方針原案のみが全体で承認されました。とりあえずは右への路線転換への大きな踏み出しは回避されたわけです。しかし継続討議扱いになったことによって千四十七名の解雇撤回勝利への闘いと路線をめぐる問題は全国の組合員に投げかけられることになったといっていいでしょう。

('98/08/26) 

■■ 全国大会補足 ■■

 以下の補足は大会でのロビー情報、各「学校」(*1)からの情報やオフレコ、私の大会傍聴の記録をもとにしていますが真偽のほどは正確には分からないのが実情です。

    *  *  *

 大会直前の八月十七日か十八日の中執会議に突然「補強議案」が出されT中執とK中執が反対、あとの中執は支持か態度保留。結局大会に出すことは阻止されず大会前日の全国代表者会議に初めて提出されたようです。(その前に一部中執によって九州と関西にはだいぶ根回しされていた模様)。「三人委員会の議事録」だという「運輸省゛記事録」なるもの(真贋は定かでないが、偽とする根拠もない)によれば、運輸省、自民党筋は五・二八判決の控訴と株主大会での行動を牽制していた模様で、三人委員会を維持するためには改革法を認めることしか残されていなかったとも推測されます。「補強議案」に対しては、対応を決めかねた「学校」、分かれた「学校」、反対を決めた「学校」とさまざまで、大会当日になって事態を知った代議員もいたようです。冒頭の高橋委員長の発言は遠まわしに補強議案に反対する内容になっていたので、何人かの代議員はそこを突いていました。革同は反対の立場でまとまった発言をしていました。横浜の代議員は沈黙でした。補強議案賛成の立場は九州の闘争団の一人、四国、岡山、盛岡、上野などの代議員でした。連合との合併を模索するいわゆるチャレンジグループが背景にあるようです。議案の取り扱いについて、某「学校」情報によれば中執の何人かは採決を主張、そうなれば分裂の可能性もあったが、他の中執が投票には反対し継続討議扱いになったようです。執行部の任期は後一年あるので、継続討議となっても補強案を提案した中執にとっては一歩前進なのでしょうか。新井財務部長の中間答弁は「補強議案」の意図をはっきりと述べていました。「私たちは改革法に反対してきたのではなく、それによって引き起こされた不当労働行為による解雇や国労差別に反対し、それと闘ってきたのだ」「今までも本部の委託のもとにエリア本部が会社と交渉し妥結したりしている」「名称問題は過去にもあった」。まったくの詭弁です。「退職等で二年で三千名も減少して現在二万八千」などの発言を聞くと、清算事業団解散にあたってなお国鉄長期債務問題を解決できない自民党の危機に乗じて、水準にこだわらず懸案を一気に解決したいのがみえみえです(可能とはおもわれませんが)。評論はできますがいったいどうしたものでしょう。

(*1) 国労には政党系列の派閥がいくつかあってそのことを「学校」と言うんですね。

('98/08/28) 

■■ その後の情報 ■■

 全国大会では「補強議案」の継続討議、「全面解決」を判断するときは臨時大会を開催し決定するということを決めました。その後九月の全国エリア委員長書記長会議では臨時大会は時期尚早ということで開催せずと決定しました。しかしその後、補強案を支持し臨時大会を要求するグループ(以下、臨大推進派とする)は各地のエリア大会で巻き返しを図り、いくつかのエリア大会でとりあえず「改革法を認める」ことの一点に絞って議案採択、書記長集約などを強行してきました。「改革法を認めると大会決定しなければ社民党は今後国会の窓口役は一切降りる」と社会党を通して本部に圧力をかける策略もあったようです。三分の一の代議員の要請か委員長の権限で臨時大会は開催されるからです。北海道エリア本部の大会で「改革法を認める」との方針を決め、十月二十二日に予定していたといわれる全国エリア本部委員長書記長会議で、いっきに十一月中旬の臨大開催にこぎつける計画のようでした。十月十七〜十八日の北海道エリアの大会では、臨大推進派の北海道エリア本部委員長は「改革法は認める」という議案を提出しました。それに対し旭川地本、釧路地本の闘争団が中心になって反対の修正動議を提出しましたが、札幌地本、青函地本などの反対によって十八対二十三で否決され、臨大推進派の議案が通りました。

 これで臨大推進派の思惑通りかというとそうも行かないようです。都労連が、何の報告も無いまま事が進むのであれば、中央共闘が提起している国鉄闘争支援一億円カンパ運動(都労連は一千万円を受け持っている)の凍結もあると国労本部をけん制したのです。都職、区職、東水、清掃は物販、署名を含め大口の支援先であり、本部は十月二十一日ごろ釈明に行かなければならないということでまったく身動きできない状況になったようです。私の知る限りでは高崎地本、千葉(水戸?)地本、東京第一ベンディング事業所やいくつかのベンディング分会などからも撤回要請がなされました。そんなこともあり臨大への流れは当面止まっているようです。の任期を考えるならまだ何かありそうですが。

('98/10/19) 

■■ 再び情報 ■■

 「補強議案」の討論集約と解決に向けた意思統一を図る臨時全国大会の開催を訴えるという一枚のファックスが十一月一日づけで東日本エリア本部に送られてきました。その内容は旧国鉄債務処理法案の審議の中で「政府も人道上の立場に立って解決するということを明確にしています」と政府の姿勢に理解を示し「JRの採用差別問題についてなんとしても政治の責任でこの時期に解決を図ることを求めていかなければならないと考えます」と断じたものです。継続討議となった「補強議案」については「この討議を放置したまま何ら解決策を示さないとすれば、中央執行委員会として責任の放棄であるといわざるを得ません」と早急な結論を求めています。そのうえで「継続討議になっている『方針(案)の補強』について集約を図るとともに解決に向けた国労の態度について意思統一を図るために早急に臨時大会を開催することを訴えるものです」と書かれています。そして呼びかけ人として坂井力雄釧路地区本部長、浦山正年盛岡地本書記長、小山富雄八王子地区本部書記長、高野苗美八王子支部書記長、姉崎憲敏横浜支部書記長など十六名の全国大会代議員の名が連記されています。八王子では全国大会代議員に対し開催要求署名オルグも展開されているそうです。休戦状態に入っていたと思われる対立は臨大推進派が公然と動いており十一月九日三役会議(結論は不明)、十一月十一日中闘、十一月十七日か十八日の全国エリア委員長書記長会議で臨時大会開催を決めようという思惑があるようです。そのため彼らは全国大会代議員の三分の一の開催要求署名を集めようとしており、それだけの数が集まるのではないかと危惧されています。集まれば三十日以内の開催です。「補強議案」は明らかに重要な路線問題を含んでいますが、今大会の代議員は「補強議案」について態度を明らかにして選出されたわけではないので組合民主主義の点から言っても強引といえます。彼らは勝てる展望を持っているのか? 会社から闘争団の問題でも彼らの処遇でもどんな担保と約束をもらっているのか? わかりません。分裂も辞さない動きと見て取れます。二万八千人の組合を分裂させてもよいという強い意思を感じます。分裂も辞さないという強固な意志に対して、「分裂だけは回避しよう」という方針では立ち向かえないと思います。今はそれしか言えません。決してどたばた劇とは言えない状況のようです。

('98/11/11) 

■■ 闘争団員と家族を全逓四・二八被処分者の二の舞にしてはならない ■■

 以上四つの文章はその時々に文章化したものや「汽笛」の会員にメールで送ったものに加筆修正を加えたもので時間的な事柄は変更していません。こうした゛状況を踏まえて、以下に現時点でのて私の考え書きたいと思います。

    *  *  *

 十月十五日に成立した旧国鉄債務処理法案の審議の過程は、二十七兆円まで膨張した債務が示しているように国鉄分割民営化政策が完膚なきまで破綻したことを国民の前に再び三度明らかにしました。それでは何が残ったのでしょうか。九六年十二月の『アエラ』で中曽根は「総評を崩壊させようと思ったからね。国労が崩壊すれば総評も崩壊するということを明確に意識してやった」と述べています。分割から十二年、依然として継続しているのはこの攻撃だけだといってよいと思います。政府・JRは国労潰しを止めておらずますます拡大しています。それは国労が二万八千人の組合員を抱えながら、曲がりなりにも国家的不当労働行為に抵抗し続け、旧総評の遺産を引き継いで存在しているからだと思います。労働法制の改悪過程に見られたように、連合は資本と一体化することによって強さと弱さを増大しつつ存在しています。全労連は議会内総与党化状況の中で、唯一議会内野党と直結して運動を構築しています。それは内容は別として彼らの強さです。そうした中で、政府資本は全労協の一角を占める国労、国労闘争団を解体しようとしていますが、その手法は、全逓労働運動を解体した時と同じように、路線の危機に乗じて(全逓では四・二八処分とそれまでの運動路線、国労で言えば五・二八反動判決とそれまでの路線)指導部に右への路線転換の圧力をかけて変質させることと職場闘争への弾圧の両面作戦だと思います。

 私は補強議案をめぐる国労の現状を考えるとき、全逓の四・二八被処分者が受けた仕打ちを思い出します。郵政省と右傾化した全逓本部は解雇撤回の裁判を取り下げて試験を受けるなら採用するという密約があるように装い、被処分者に提訴を取り下げさせた上で採用試験を受けさせて全員を不採用にし、挙句の果てに全逓本部は被処分者から組合員資格を剥奪してしまいました。四・二八被処分者を追放することによって全逓労働運動の右傾化は完成したといってよいでしょう。転がる坂は官僚にとって急坂です。

 私は裁判闘争では和解に反対ではないし必要なときもあると思います。どのような解決水準であろうとも闘争団自身の多数が納得しやむをえないと判断するならです。しかし国鉄労働運動と政府・JRとの和解は決してありえません。政治的にも運動的にも徹底的に解体し尽くされ連合に吸収されるのか、耐え抜いて全労協の道を堅持するのか、「補強議案」をめぐってそのことが厳しく問われている以上、私は「補強議案」には反対ですし、白紙撤回以外にないと思います。抽象的で雑駁になりましたが、ここから問題を立てていきたいと思います。

('98/11/12) 


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