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中国大陸の蒸機を撮る

−−  最近海外へ鉄道の写真を撮りに行ったそうですがいつ頃でどこへですか。

 昨年12月に中国の北京から北西600キロメートルくらいの包頭市(パオトウ)の周辺に一週間ほどです。

−−  ヨーロッパ鉄道の旅の企画などが流行ですが中国へこだわる理由は何かあるのですか。

 現役で働いている蒸機(蒸気機関車)の迫力を求めて、また費用=滞在時間の面で見ても中国が一番安いからです。全土で3千から4千車両程度が動いているそうです。

−−  日本では鉄道より自動車交通が優先されていますが中国の交通事情はどう感じますか。

 中国では都市部を除いて道路整備は遅れており、客貨とも鉄道中心となっています。一般の労働者が自家用車を持つのはまだ先のことでしょう。ただ、バス、タクシーといった公共交通には大量の車両が使われています。

−−  ところで中国の鉄道はすべて国営なのですか。それを感じることがあったら教えてください。

 中国にも日本と同じように沿線自治体が経営する第三セクター鉄道も存在し、多くが国鉄の中古機関車(蒸気ディーゼル)を買っているため、蒸機を使用しています。単純に言えば「合理化」の進み具合でしょうか。たとえば貨物列車の最後部に連結されている車掌の乗った「緩急車」が第三セクターは省略されていたりします。

−−  中国の鉄道労働者の雰囲気について感じたことがありますか。

 日本で言う営業関係の労働者は国鉄の制服を支給されているがその他は自前の服で仕事をしている。国鉄内部で運転士はエリートであり本社の職員より賃金は高いし、職人気質?もあるようだ。鉄道員に限らず中国の営業職はデパート、ホテル、一般商店も含め男女性ともきわめて無愛想な対応で、昔の日本の国鉄以下である。列車においても長距離列車は16両以上連結されていて一両に一名以上の女性の車掌が乗っている。食堂車にも数名の労働者がいたが「笑顔で対応」は一度も見たことが無かった。まあこれも慣れの問題でしょう。

−−  そのあたりの人々の生活や顔を見て感じることを挙げてください。

 都市部と周辺部の市民生活には大きな違いがあります。都市=富裕層とは必ずしもなっていないと思いますが、日本人の目から見るとそのように映ります。今回行ったのは内モンゴル自治区というところで、公用語=北京語のほかモンゴル語も使われていて、顔つきも漢民族とは違う、肌の色を除けば日本人にそっくりな蒙古民族も多く親近感が持てます。一見自分本意でしか行動していないように見える中国人も自分たちからすればごく普通の「生活パターン」なのでしょう「日本人的モラル」は北京空港に降りたときからすぐに音をたてて崩れていきます。世界人口の五分の一を持つ中国が資本主義にどっぷり漬かってしまうときを考えると、今「グローバルスタンダード」等と自国の「主義」を、押し付けているアメリカなどが小国にしか見えなくなることでしょう。

−−  以前行ったのは何年前ですか?変化を感じることがありましたか。

 昨年二月に初めて中国へ行ったのですが、入り口である首都北京の街の様子がずいぶん変わりました。建国五十周年(1999年10月)とオリンピック立候補による街並美化運動のため、ばい煙を撒き散らしていたバス、タクシー、トラックが一掃され(新車に置き換え)大気汚染が減りました。わずか十ヶ月でここまで変わるとは実にすごいことです。

−−  読者の方に一言。

 中国に行くなら冬をお勧めします。衛生状態が非常に悪く夏場はにおいが気になるのではないかと思います。とにかく広い国です。何度でも行く人、一度いったら二度と行きたくない人に分かれるようです。

( インタビュー・KT)

(2000/01/11)


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