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国労などの出した声明

 本日、東京地方裁判所民事代11部(萩尾保繁裁判長)と民事第19部(高世三郎裁判長)は、国鉄の分割民営化の際に国労組合員がJRに採用されなかったことを不当労働行為であるとしてJR北海道、JR九州、JR東日本、JR東海、JR西日本、JR貨物などに対して公正な採用手続きの実施や採用などを命じた中央労働委員会の命令の取消しを求める行政訴訟(原告JR各社、被告中央労働委員会、被告補助参加人国鉄労働組合)において、判決を言い渡した。
 19部の判決は、改革法のもとにおいても、国鉄が名簿の作成において国労組合員を排除し、そのことを設立委員が認識し又は認識可能であったならば設立委員ひいてはJRが責任を負うべきものとし、「改革法23条によりJRが責任を負う余地はない」とするJRの主張に対しては、「改革法をもってしても労働組合法7条の規定の適用を排除することは許されない」としてこれを排除した。(しかし、判決は救済方法としては「採用手続きのやり直し」を命ずるべきであるとして命令を取消した)
 これに対し、11部の判決は、国鉄改革法全体の構造と国会審議の経過などを無視し、改革法23条を極めて形式的に解釈して、国鉄が作成した「名簿」に不当労働行為が存したとしても、その責任は国鉄(清算事業団)が負うべきものであり、JRには責任がないとしたものである。しかしこのような判断は、これまでの判例や労働委員会命令及び学説の流れを無視した極めて不当な判断であり、厳然として存在した史上空前ともいえる不当労働行為を免罪し、不当労働行為救済制度を否定するものである。われわれはこのような不当な判決に強く抗議する。
 民事19部は、行政訴訟における司法判断としては初めてJRの不当労働行為責任を認め、他方、民事11部は不当労働行為の責任は国鉄(清算事業団)が負うべきものとした。11部の判決の不当性は別として、本日の二つの判決は、本件不当労働行為は、JRと清算事業団すなわち政府の責任において解決すべきことが司法の名において示したということができる。
 政府の責任については、本年4月14日の参議院本会議において、橋本首相自ら、「本件につきましては、来月末に裁判所の判決が予定されていると聞いております。政府としては、これが問題解決の契機になり得ると考えられることから、関係者の今後の対応を見守りながら、引き続き努力していきたいと考えている」と述べているところである。
 国労組合員について組合所属を理由とする差別的採用の不当労働行為が存在したことは多くの地労委、中労委命令によって明確に判断されている。その国労組合員が職場を奪われてから11年、清算事業団から解雇されてから8年が経過し、本人と家族の苦しみは一刻も放置できない状況であり、本件紛争が早期抜本的な解決を求められていることは疑いのないところである。
 われわれは政府とJRが、責任をもって本件紛争の解決に取り組むよう強く要求するとともに、早期抜本的な解決へ向けてさらに奮闘する決意である。

1998年5月28日

国鉄労働組合
国労弁護団
国鉄闘争支援中央共闘会議

国労委員長のコメント

 本日、東京地裁民事11部は、JR不採用事件について、「不当労働行為の責任はJRにあり」とする中労委命令を事実上取り消し、民事19部は、「JRに責任はある」としながらも、「採用」命令を退けるという判決を言い渡した。
 国鉄分割・民営化の過程で行われた不当労働行為事件が、地方労働委員会から中央労働委員会へ、さらに裁判所へと係争され、11年余にわたる歳月を経て示された民事11部の司法判断は、労働委員会の命令を基本において退けており、まことに遺憾であるといわざるをえない。
 本判決は、11年余の間、筆舌に尽くしがたい苦しみに耐え、ひたすら法と正義の実現を信じて闘い続けてきた組合員・家族の期待を裏切るばかりでなく、第三者機関である労働委員会の不当労働行為救済制度をも覆す判決であり、到底容認できるものではない。
 このうえは、中労委と十分相談のうえ、控訴等強い姿勢でのぞむとともに、政府が、この事態を座視することなく、国鉄改革によって産み落とされた11年余にわたる労使紛争に終止符を打つため、政・労・使による話し合いによる解決を決断するよう強く求める。
 私たちは、民事19部が認めたJRの使用者責任と民事11部が指摘した国鉄および国鉄清算事業団の責任を徹底的に追及するとともに、本判決を新たな闘いの出発点とすることを明らかにする。
 この間の組合員・家族の奮闘に心から敬意を表するとともに、私たちを常に支え、共に闘いの歳月を歩みつづけてきた全国の支援の仲間の皆さんの誠意に重ねて感謝申し上げ、1日も早い解決を実現させるために、全力を傾注する決意である。

1998年5月28日

国鉄労働組合 中央執行委員長 高橋義則


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