組合員31人が16年ぶりに隔離職場から解放

2003/04/25

 国労東京地本に所属する組合員31人が、このたび16年間に及ぶ隔離職場から解放され、本務職場に戻りました。
 31人が1月末まで所属していた「ベンディング事業所」は、JR東日本の関 連会社が発売している缶入り飲料を駅の自動販売機に投入して回る仕事を担当しています。分割・民営化とJR東日本の発足とともに、運転士、車掌、保線、電気、駅など、様々な職場で働いていた国労組合員のみを集めて作られた職場で、集められた組合員の多くは、国鉄時代、分割・民営化とともに清算事業団に配属する目的で選別された人材活用センターからの横滑り発令でした。
 それから16年。「ベンディング」に配属された国労組合員は本来の仕事を奪われ、ジュースの配送を続けてきました。今ではほとんどの者が本来の職場で働いた期間よりもベンディング生活のほうが長くなっています。首都圏一円に作られた職場に1月の時点で230人の国労組合員が隔離されていましたが、そのうちのひとつが廃止となり、1事業所分31人が本務に戻されたわけです。「ベ ンディング」は大分前から段階的に廃止、統合が続いており、本来職場に戻った組合員もいるにはいたのですが、今回ほど、多数の労働者が一挙に本務職場に戻ったのは初めてであり、さらに、今回は、廃止対象に含まれない職場も含めて、東京支社管内の「ベンディング」で働くすべての労働者に対して、本来職場での労働に適しているかどうかを調べる「適性検査」が実施され、検査が実施されなかった他支社でも、廃止や下請化のうわさが出ているなど、隔離職場全体の縮小、廃止への道筋が見えてきたような感じもします。以下は、このことに関して、仲間とやり取りしたメールの一部です。

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 Aさん、○○駅への発令、おめでとうございます。これで16年間のトレーニングセンター暮らしとはおさらばですね(ハハッ!)。駅に発令されたら、毎年休職して山に行くことはもうできなくなるのでしょうが、私は、○○さんが毎年休職して山に行っていれば、そのうちやばいことになるのではと心配していましたから、これを機会に、本務での仕事の合間にも行ける、低い山へのハイキングに趣味をお変えになることをお勧めいたします。
 さて、今回の発令で、退職までにはわれわれ全員が「普通の鉄道員」に戻って鉄道生活を終えるという展望が見えてきたと思います。もちろん、われわれが受けた不当な仕打ちに対する謝罪の獲得も損失の回復も、まったく展望は開けていませんし、「普通の鉄道員」といっても賃金その他の差別は依然として続いているわけですから、手を打って喜ぶというわけにはいきませんが、まあ、国家権力に逆らって生きてきた私たちの人生の経過から考えれば、そこそこいい結末だといえるのではないでしょうか。また、差別を受けてはいるものの、「普通の鉄道員」にもどるということは、「平成採用組」を含めた現在の「普通のJR社員」の置かれている立場や気持ちとダイレクトにつながることができるという意味でも大変いいことだと思います。むしろ、このことが一番のポイントかもしれません。
 私は、現状では、ベンディングに隔離されている国労組合員が本務に戻っても、直ちに闘いが組織できるような状況にはないと思います。そもそも、JR会社の立場で考えれば、「本務に戻しても波風はたたない。むしろ、ベンディングを解体し組合員を各職場にばらまけば、国労の闘いを薄めて解消できる」という見通しがあるからこそ、今回の本務発令を行ったと考えたほうがいいかもしれません。主導権は会社にあります。
 けれども、主導権は取れないとしても、私はベンディングの解消と本務への再配置という流れに乗る方がいいと思います。それで、本務に戻って、会社の思惑通り闘いが雲散霧消するようなら、もともとそれだけの闘いだったわけだし、会社の思惑を超えて、本務から「あっと驚くような闘い」が作れたら、それはもちろんすばらしい事だし。現実には、16年も隔離されていれば、もう本務には戻りたくないという気持ちが強くなっても仕方ないと思いますし、そう思わせた責任は会社にあるわけだから、「今さら本務には戻らない。ベンディングで最後まで行く」という選択をした仲間の立場も尊重する必要はあるとは思いますが…。
 最後に、「普通の鉄道員」で終わる展望の出てきた私たちの対極には、まったくその展望を持つことができず、いまや国労からも切られようとしている闘争団の仲間がいます。私は、十中八九闘争団の一員になるところを、偶然の定員割れでJR採用になった者の義務として、「闘争団の名誉ある和解」のために今後も闘い続けようと思います。職場でいくら柔軟(軟弱か? ハハッ)になっても、闘争団の仲間とともに闘うという立場を堅持する限り、人の道を踏み外すことはないと自分で納得しています。1人でも多くの仲間が本務に戻るよう、そして、本来職場から「闘争団の名誉ある和解」を応援する闘いをつくりあげるためにがんばりたいと思います。

P.S. Aさんからのメールに(2月3日~16日までの平日は鉄道事業従事者研修で、土日祝休みです。)とあるのは、日勤だから酒飲んでもいいよということでしょうか。みなで、近々一度飲みましょうかね。