2008年5月21日、東京地裁での意見陳述

2018/02/28公開

=なぜ不採用になり、解雇なのか。その理由を聞き出すまでは死ねない=

元国鉄宮崎車掌区車掌長                     
元国鉄労働組合宮崎闘争団 馬場園孝次

 陳述書

1.

 私は、昭和32年4月に国鉄に入社 し、昭和36年4月から宮崎車掌区の車掌として26年間、無事故で乗務してき ました。最終職名は車掌長でした。
 この間私は、日本の交通基幹産業の国鉄労働者として万人の旅客に接し、サー ビス等の仕事ができたことに誇りと喜びをもってきました。
 しかし、48歳で「人材活用センター」 (以下、人活センター)発令、49歳で清算事業団送り、52歳で解雇され、今年 70歳、古希を迎えました。20年余、怒りと悩み、苦しみの連続の日々でしたが、「こんな不当なことは許せない」と全 国の支援の皆さんと妻の支えによって闘い続けてきました。

2.

 忘れもしない昭和62年2月16日、 現場長から口頭で「あなたはJRに採用さ れませんでした」と冷たく告げられ、理由を聞くと「設立委員が決めたことなのでわかりません」の一言でした。
 昭和61年は「分割・民営化」に伴う、 いわゆる「振り分け」の動きが加速され、 管理者も含め「新会社にいけるかどうか」が焦点になりました。
 私は61年7月18日、何の理由もな く「宮崎車掌区人活センター」に発令され ました。しかし実際は、国鉄最後の昭和 62年3月まで「人活センター」としての 仕事を一切することなく、宮崎車掌区で車掌として乗務を続けてきました。
 このように現場は要員不足であり、まさに「人活センター」への配属は、新会社への「差別・選別」の布石であったことを 裏付ける証拠といえます。
 昭和61年9月13日付けの朝日新聞 の「天声人語」でさえ、人活センターにふれて「分割・民営化を見越した異動のやりすぎで列車運行にまで支障の出る恐れが出た」と記されていました。
 当局は、昭和61年度末に特別退職者9名、公的部門転職者8名がいるという ことから、昭和61年2月頃より、宮崎車掌区に駅、鉄道公安官、運転士10数名を車掌として短期養成するために配属 しました。彼等は1名を除きいずれも国労以外の組合に所属する人たちで、全員が新会社に採用されることを前提にした 要員配置と考えられ、実際、全員がJRに採用されました。
 これは、私たちを不採用にするための 「玉突き」であり、「血の入れ替え」の何ものでもありませんでした。
 その後、昭和62年4月1日から清算事業団宮崎雇用対策支所に3年間配属さ れました。
 支所では連日、ハローワーク、新聞求人欄からの就職情報が掲示されましたが、内容はほとんど月8万円から16万程度の賃金(私は当時、約30万円の給与)であり、当局の「再就職の斡旋をした」とい う事実だけを作るためのアリバイであっ たことは明白です。
 「平成2年3月、解雇予告を受ける中で、妻とも色々話し合いましたが、結論が出ず、3月31日の朝を迎えました。自分 としては、不採用になり解雇される理由 はないとして「俺は頑張りたい」と伝えると、妻もやむなくだったとは察しますが、「信ずる道を選んだら」と言われ、涙が溢 れたことを思い出しています。
 解雇された後、レンタカー会社、保育園の運転手等の試験を受けましたが、理由不明のまま不採用でした。多分、「国労は働かない、不良職員」という政府のキャーンペーが影響を与えていたと思います。その後、ホテルの洗い場(時給550円)、冬季のガソリンスタンドのバイト(時給700円)で働き、平成3年よりホテルの駐車場(時給720円)でバイト中です。

3.

 分割・民営化前、政府はマスメディアを総動員して、「国労の労働者は、働きが悪いとか、勤務状態が悪い」とのキャンペーンがはられたことはご承知の通りです。
 しかし、私自身のことを述べますと、「昭和61年10月14日(人活センター発令中)、鹿児島鉄道管理局長より「優良職員」として表彰されています。時あたかも分割・民営化の半年前のことです。
 国鉄時代の29年間無事故で、しかも、「優良職員」として表彰されている私が、なぜ不採用になるのかわかりません。あるとすれば、私が国労に所属していたからであると考えざるを得ません。
 このように、定年までの仕事の期待を奪い、白昼堂々と憲法・労組法無視の組合差別をし、生活までメチャクチャにした国・国鉄を許すことができません。

4.

 素直に言って私は、平成元年5月の宮崎地方労働委員会の救済命令を受けたときは、60歳までにはJRに採用されると信じていました。しかし今は、70歳になりその夢もとうにたたれました。なぜ不採用になり、解雇なのか、その理由を国鉄当局から聞き出すまでは死ぬわけにはいきません。
 どうか当裁判所において憲法と道理に基づき、公正・公平な判断を下さるよう切に望み陳述を終わります。